第3章 爆豪くんと初デート(?)
「……っ」
どうしたの、という聞き方は意地悪すぎたのか。
爆豪くんは言葉に詰まったらしく、ふい、と目をそらす。
けれど私から、譲ってくれるの? と聞くのも、一緒に行きたいなんて言うのも変な話だと思う。
これでも一応、轟くんの彼女だし。
気まずい沈黙が私たちの間に流れ、悩んだ挙句、私はスルーに決めた。
そして引きつった笑顔を浮かべながら後ずさりし、部屋のドアノブに手をかける。
「……じゃあ私はこれで____」
「流石にそれはねぇだろ」
「…………ですよ、っ!?」
強引がすぎたな。と苦笑いを零す私の腕を、爆豪くんはがっちりと掴む。
そして私を逃がすまいと、爆豪くんの空いた手が、爆豪くんとドアとの間に私を閉じこめた。
まるで、壁ドンされているみたいだ。
顔を向かい合わせているわけじゃないから、爆豪くんが一体どういうつもりなのかも分からない。
けれど、突然の事に驚き、赤らめてしまった私の顔を見られることがないのはまだ良かった。
って、そんなこと考えている場合でもなくって。
「バカにしとんのか」
爆豪くんの囁き声が、私の耳をくすぐる。
「しっ……てないよ、何も言わなかったのは爆豪くんの方じゃん」
「察しろや」
「むり、無理です」
誘われていると察していたとしても、爆豪くんが私を誘う意味が分からないんだもん。
ただ、ペアで発表することになったってだけ。
それだけの関係に、意味などないはず。
察したところで、何も変わらないだろうし、変わって欲しくない。