第3章 爆豪くんと初デート(?)
数日後。
「あれ、観月出かけるのか?」
「っ! うん、ちょっと用事があって」
まだ朝も早い時間。
辺りに人がいないのを確認して、寮を出ていこうとしたその時の事。
ちょうど、エレベーターの方から切島くんが降りてきて、こっそり出かけようとした所をバッチリ見られてしまった。
「どこ行くんだ?」
「か、買い物!」
「こんな早い時間にか?」
「うん! どうしても、欲しいものがあって」
早めにいかなきゃダメなのだとでっち上げた嘘をつくと、切島くんは割と興味なさげに、「ふーん」と呟く。
「なーんか爆豪もさ、朝っぱらから出ていったみてぇなんだよな。珍しくうるさかったから、俺起きちまって」
「そ、そうなんだ……」
「って、急ぎなんだよな。わり、呼び止めて」
「ううん。大丈夫だよ」
じゃあね。と切島くんに手を振って、逃げるように寮を出ていく。
そっか。
爆豪くんはもう寮を出たんだな。
ということは、私も急がなきゃ。
____
私が朝から寮を出た理由。
それは、先日爆豪くんの部屋で、発表に向けた準備をしていた時にあった。
一区切りつき、そそくさと部屋を後にしようとした時、爆豪くんに「ちょっと待て」と呼び止められたのだ。
「どうかした?」
「…………これ」
眉間に皺を寄せた爆豪くんが取り出したのは、二枚のチケット。
そのチケットには、最近、隣街に出来た、激辛料理のお店の名前が書かれていた。
「これ……が、どうしたの?」
すごく羨ましいと思う気持ちをグッとこらえて、爆豪くんに尋ねてみる。
爆豪くんと私が激辛好きなのは、クラスの中でも有名な話。
私は爆豪くんが苦手だから、二人でその話をした事がある訳ではないけれど、きっと爆豪くんの耳にも入っていたのだろう。
しかし気になるのは、爆豪くんがそのチケットを、どうして私に見せてきたのかという事だ。
まさか譲ってくれるとか?
それとも、一緒に行こうとか?
どっちにしろ、身構えずには居られなかった。