第2章 爆豪くんは距離が近い。
コンコン、とドアをノックして待つこと数秒。
ガチャリと開いて、不機嫌そうな爆豪くんが顔を覗かせる。
「……はえーな」
「ご、ごめん。放課後すぐって言ってたから……もう少し待ってた方が良かった?」
「別に」
入れよ。と言わんばかりに、爆豪くんはドアを大きく開き、私は軽く会釈をして、その中に足を踏み入れた。
そういえばお部屋披露大会の時、爆豪くんは寝ていたから、部屋に入るのは初めてだ。
そう思いながら見渡した部屋は、想像していたよりも暑苦しくなく、綺麗な部屋だった。
「……その辺テキトーに座っとけ」
「あ、うん。ありがとう」
爆豪くんが指さしたのは、部屋の中央付近にあるローテーブル。
課題をやるのに丁度よさそうなそこに私が腰を下ろせば、爆豪くんは少しして、飲み物を手に私の隣に座った。
「お茶でいいだろ」
「え!? う、うん。……ありがとう」
私の分まで用意してくれているとは思わず、呆気に取られながらそのお茶を受け取ろうとして、今度は、爆豪くんとの距離感に驚く。
少し身体を動かせば、肩先が触れるほどの距離。
テリトリーに踏み居られたくない人間の行動だとは思えない。
課題をやるためだとしても、ローテーブルがそれほど大きくないにしても、それは近過ぎるような気がした。
「……ンだよ」
「な、何でもない」
お茶を受け取ることを忘れて、至近距離にいる爆豪くんを見つめてしまえば、爆豪くんは眉間に皺を寄せた。
その表情も、いつもなら怒らせてしまったと感じるだけだろう。
しかし近過ぎたためか、爆豪くんがどこか、寂しそうに見えてしまったのだ。