第2章 爆豪くんは距離が近い。
「と、とりあえず! 課題進めよ」
うるさく鳴りだしそうな胸を抑えて、強引に話題を切り替える。
そうだ、課題をやるためにここに来たんだもの。
爆豪くんだってそのつもりなはずたし、変に戸惑っていちゃ迷惑だろう。
そう思ってノートを開き、シャーペンを取り出してみるのに、爆豪くんの距離の近さに、いちいち反応してしまう。
息遣いも。
真剣な眼の赤さも。
時々笑う時の少年らしい表情も。
甘ったるいバニラのような匂いも。
何も知らなかったし、知りたいとも思わなかった。
それなのにどうして、こうも気になってくるんだろう。
「……おい」
「ん?」
「調子悪ぃんか」
「…………そんなこと、」
ないよ。と言おうとして、また爆豪くんの眼の赤さにやられる。
嘘をついても間違いなく見破られるけれど、どう答えるのが正解なんだろう。
私は轟くんが好きなはずなのに、爆豪くんの仕草に気を取られてます。なんて、言えるわけがないじゃない。
「……言いたいことあンならとっとと吐けや」
「ごめん、やっぱ何でもない」
爆豪くんのキツい言葉を前に、私はふと冷静になった。
慣れない環境で二人きり。
だから妙に緊張して、妙に気になってしまうだけ。
別に、爆豪くんの事が特別気になっているわけじゃない。
はず。