第2章 爆豪くんは距離が近い。
「……う、ごめん」
「っち、いちいち謝ってきてウゼェんだよ。んで、このテーマはどうかって聞いとんだわ」
これ以上爆豪くんを怒らせまいと、爆豪くんが書いた文字に視線を落とす。
「あぁ……うん、いいと思うよ」
「……他になんかねぇのかよ」
二週間の時間設定の中でやりやすそうないいテーマだと思い、簡単に肯定をすれば、爆豪くんは不満そうにそう呟いた。
自分から提案をしておきながら、どうして不満そうにしているのだろう。
そう思いながら首を傾げると、爆豪くんは「もういいわ」と呟く。
「んじゃこれを軸に進めてくから、内容としてはそうだな……」
連想ゲーム形式に、テーマの横に増えていく吹き出し。
元々爆豪くんの中に発表の構想があったのか、驚くほどにスラスラとノートは埋まっていく。
その指先と、増えていく文字を見ながら、あぁ、綺麗だな。とぼんやり思った。
「……おい」
「な、なに」
「見てるばっかじゃなくてなんか言えっつっとんだろが」
「あ、ごめん。綺麗だなーって思って」
「…………あ?」
「あ」
相変わらず顰めっ面だった爆豪くんが、ポカンと口を開ける。
あまり見られないその顔つきに、私のせいで迷惑がかかっているという事を忘れ、思わず吹き出してしまう。
「……テメェ、ふざけんのも大概にしろや」
「ご、ごめん。ふざけてはないんだけど」
開いた口を閉じ、またしても顰めっ面になった爆豪くんにそう弁明する。
すると爆豪くんは、少しだけ目を見開いて、口元を手で覆った。
少なくとも、また怒らせることは無かったようで良かったかもしれない。
そう思った直後、これ以上怒られないようにとすぐに思考を切り替えた。
「あ、ここ、こういうのはどうかな……」
すっかりお役御免になっていたシャーペンを取り出し、爆豪くんが書いた文字の横に、思いついた単語を書き入れる。
「……わるかねぇ」
「よかった」
爆豪くんが、ボソリと呟く。
ようやく、まともなコミュニケーションが取れた気がする。