第1章 君を手に入れるまで、あと少し ((千冬
「。千冬。」
「圭介!お話終わった…の…」
「おー。悪いけど、千冬のこと送ってやってくれよ。俺はこいつを…っておい!」
やっと場地さんが来た、と嬉しそうな表情を見せたのも本当に一瞬だった。
場地さんの後ろからひょこっと顔を出した女の子を見ては一気に表情に影を落とした。
そして、場地さんの言いたいことがわかったは、話の途中で俺の腕を引いて歩きだした。
「おい、…、!!」
「ちふ…、わたし…っ」
階段を下まで降りたところでに呼び掛けると、足はゆっくりと止まり俺の胸へと飛び込んできた。
きっと、ずっとこらえていた涙。
それが重力に逆らうことなく地面に落ちたり、俺の特服を濡らしたりする。
どれだけ辛いのか、その涙の量が物語っていた。
それはそうだ。彼氏が彼女の自分ではなく、他の女を送っていくというのだ。
俺の胸で泣くの肩を抱き、そっと帰宅の道を進み始めた。
こんなところで抱き合っていたら、場地さんに見られ、さらに気まずくなってしまうだろう。
そんなことしたら、が悲しむ。
…俺なら、こんなに泣かせたりしないのに。
でも、あくまでも場地さんの彼女。
彼女を想うなんてことは恐れ多いことだと言い聞かせた。