第1章 君を手に入れるまで、あと少し ((千冬
「圭介はさ、かっこいいよね。」
「当たり前だろ。」
「困ってる人を放っておけないの。」
「知ってる。」
「圭介がいないと寂しいって告白したとき、私のことも、困ってるように、見えたのかな。」
「それはちげぇだろ。ちゃんと、お前のこと好きだって。」
東卍の集会後。武蔵神社に集まった人だかりの隅っこでくよくよと悩んでいるが見つめる先には、彼氏である場地圭介が最近彼氏と別れて落ち込んでいるという女の頭を撫でているところだった。
ここには、よく幹部目当てに知り合いについてくる女もいるから、きっとその類の女だということは場地さん以外は気づいていると思う。
そして、俺、松野千冬はそんなを慰めている。
は場地さんの一つ下で俺とタメ。俺と同じクラスで、場地さんとは幼馴染らしい。
優しい場地さんが女の子を励ますのは今日に始まったことではない。
それを見るたびに自分で「大丈夫」、と言い聞かせながらも落ち込んでいる場地さんの彼女を俺は見過ごすことができなかった。
場地さんが俺に話すことは、彼女の話ばかりだからだ。
彼女を嫌いなわけがない。それでも、落ち込んでいる人をほおっておけないあの人の代わりに、俺がこの人を守ってあげようと決めたんだ。
「まあ、お前のことは俺が守ってやるよ。場地さんの大事な人だしな。」
「ははっ…、それ、圭介に言われたかったな。」
俺は、自嘲気味に笑うの頭をそっと撫でた。
けど、きっと圭介にされたかった…と彼女は言うんだろう。