第8章 誕生日祝い
「兄上!早く早く!」
「おぉ!どうしたどうした!」
杏寿郎さんは千寿郎さんにぐいぐいと手を引かれて居間へ来た。
「お帰りなさいませ。」
「うむ!いやしかし!どうした!この御馳走は!」
食卓の中央には鯛の塩竈焼き、それに煮物や漬物も。これだけでも存在感がある。
「今日は兄上の好きなものを沢山用意しましたよ!座って待っていてください!」
千寿郎さんは杏寿郎さんの背を押して無理矢理に座らせ、自分はご飯をよそいにいった。では私はお味噌汁ですね。ゆっくり立ち上がると背中が少し痛む。
杏寿郎さんは瞬きする間に置かれていくさつまいもご飯とさつまいものお味噌汁に感嘆の声をもらした。
「凄いな!どうしたんだ今日は、何か良いことがあったのか!」
「いろいろありましたが、これは兄上の誕生日の祝いです。」
千寿郎さんはほくほくとした笑みを浮かべて、いつもの場所に腰を下ろした。誕生日はもう少し先だが、いつ祝えるか分からないので、いつ戻られても良きように準備をしておいたことを話していた。
「そうか!では温かいうちにいただくとしよう!いただきます!」
まずはお椀を手に取りにお味噌汁を飲む杏寿郎さんと、それを眺める私たち。
「うまい!やはり家で食べる食事は格別だ!」
杏寿郎さんはいつものように晴れ渡った笑顔で千寿郎さんに応えた。喜んでいただけて良かったですね、私も嬉しいです。
「鯛の塩竈も割りましょうね。」
木槌で塩竈を割って、中の鯛が顔を出す。中はまだ温まっている。身をほぐして取皿に分けて渡した。杏寿郎さんのと、千寿郎さんにも。
「鯛か!うまい!!」
杏寿郎さんは大きなひと口で食べてはうまい!うまい!と言っていた。さつまいもご飯もお味噌汁もみるみるなくなり、おかわりもされた。
「今日は食後に甘味もありますからね、少しばかりお腹に隙間を残してくださいね。」
「そうか!だが心配いらん!出されたものは食べ尽くす!」
相変わらず元気なお人。笑顔絶やさず、たくさん食べて、他人をも励ます振る舞いを自然とこなしている。本当に、尊敬します。
まあ食べるのも早いのであっという間に平らげてしまった。
食事の皿を下げてから、私は用意していたケーキに最後の盛り付けをして食卓へ。
杏寿郎さんと千寿郎さんが二人座ってお待ちかねだ。