第19章 黎明のその先へ【END2】
もっとしたいのは山々だが、今は道場に竈門少年と千寿郎を待たせている。
惜しみながら唇を離し、頬にそっと手を添える。
「今夜は、君の部屋へ行ってもいいだろうか。」
月城は照れくさそうに微笑んで、だが頷いてくれた。
それが可愛らしいので、やはりもう一度と口付けた。
彼女は静かに受け入れてくれた。
「さぁ、二人がお待ちですよ。」
「うむ!君も来るだろう?」
「お邪魔でなければ…」
「邪魔なわけがあるまい。改めて竈門少年のことも紹介しよう。」
道場へ行くと、竈門少年と千寿郎は打ち込み稽古をしていた。二人は俺の姿を見るなり動きを止めて向き直る。
なんとなく、竈門少年と月城は目を合わせて何か合図を送り合っているようにも見えた。
「頑張っているな!」
「はい!」
「兄上、お話はもうよろしいのですか?」
「あぁ。二人にも言っておこう。月城、こっちへ。」
少し後ろに下がっていた月城を隣にこさせる。
「今日より、彼女には住み込みで来てもらうことになった。」
「……えっ?」
疑問符を浮かべたのは月城だった。
「そんな話…でしたっけ?」
「言ってなかったがな!俺の目の代わりになって助けてほしい。君は目がいいから頼りにしている。」
「あ…そういうことですね。承知しました!」
月城は理解を示し、深く頷いてくれた。
少々強引かもしれないが、これでようやく傍における。
それに千寿郎もとても喜んでいた。抱きついてしまいたい気持ちもあったろうに、竈門少年がいるからかそうはしなかった。
「月城。もう知っているとは思うが、彼が竈門少年だ。俺の継子となった。」
竈門少年は改めて名のり、頭を下げた。
月城は温かい眼差しを送っている。
「よろしくお願い致します。杏寿郎さんのお稽古は厳しいですよ。応援しておりますので、頑張ってくださいね。」
「はい!頑張ります!」
元気の良い返事を聞いて微笑み返す。
竈門少年も、月城の笑顔を見て安心しているようでもあった。
「さて、竈門少年!夕餉の前にもうひと頑張りだ!ついてこれるか!?」
「はい!」