第8章 誕生日祝い
それから千寿郎さんにお願いしてアイシングの材料を混ぜてもらった。粗熱をとったら型からケーキを出し、アイシングをかけたら完成。
「わぁ!美味しそうですね!」
「ですが、華やかさに欠けますね。やはりドライフルーツがある方がいいわ。」
「今回は試作ですし良いではないですか。」
早く食べましょうとお顔が言っていますので、早速包丁を入れて等分に切った。
一つをお皿に乗せて千寿郎さんへ渡す。
「こちらを母上様の御前に。」
「ありがとうございます!」
千寿郎さんはお皿と紅茶の入ったカップを手に、お仏壇のある部屋へ行った。
もう一つはお父上様へ。お盆に乗せて部屋の前に持っていき、戸は開けずに声をかけた。返事は無かったのでそのまま置いてきた。
さて、最後は千寿郎さんと私に。一つ余り。
「さあ試食しましょう。」
小走りで戻られた千寿郎さんは勢いそのままに座った。
「「いただきます。」」
一口分をフォークにとって食べる。過去に食べた味を思い出して比べた。
「柔らかくて、優しい甘さで美味しいです!」
千寿郎さんはそう言ってもう一口、もう一口と食べ進めた。
「甘さは足りなくありませんか?」
「丁度良いと思います!」
ではあとは飾りですね。赤いドライフルーツに胡桃など木の実があっても良さそう。
「ところで姉上。もう一つの方はなんですか?」
実はもう一つ別な味のものも入れ替わりに焼いていた。
「蒸したさつまいもを潰して生地に混ぜたものも作ってみました。」
「それは兄上が喜びそうですね。」
しかし焼き上がって食べてみると、人参より主張が強く、他のお料理との兼ね合いも考えると、あまりにさつまいも尽くしでしつこいのではとなり却下になった。
一応お父上様にも感想を伺ったが、無言のままだった。
「私の家の近くですと、海外からの食材も売っているのでケーキの飾りに良さそうな物を見に行ってみますね。ドライフルーツなら保存もききますし良いかと思います。」
夜、互いに湯浴みも済ませたあと、居間で温かいお茶を飲みながらお祝いについての話をした。
「あの、俺も一緒に行っても良いでしょうか。姉上の住んでいらっしゃるところは港の近くなんですよね?」
「はい。貿易船がよく停まっています。いつにしましょうか?私は、もう数日は刀ができないそうなのでいつでも。」