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桜月夜【鬼滅の刃】

第1章 異人の隊士



「お近づきの印にどうぞ。」

「これは、なんでしょうか?」

千寿郎は己の掌で小さく転がるそれを不思議そうに眺めていた。

「飴玉でございます。りんごの味がいたしますよ。」

千寿郎は包をしばらく眺めて、やがて着物の裾にしまった。


「ありがとうございます!大切にいただきます!」

月城は優しく微笑んでいた。
なんとなく母の顔を思い出した。相手を慈しむような表情。
きっと彼女にも大切な誰かがいるのだろう。

千寿郎とはそこで別れ、我々は道場に入った。
月城は隅に鞄と日輪刀を置いた。


「君の場合は…」

俺は彼女に木刀を渡しながら説明した。


「全集中の呼吸が使えるものの精度が悪い。息がすぐ乱れて体が動かなくなるだろう?」

「…はい。」


月城は受け取った木刀を眺めてから、俺をみた。

「だが刀の軌道は正確そのものだった。あれだけ呼吸が乱れている中でも鬼の首に向かって確実に刀を振っていたからな。癸の隊士にしては天晴!!」

「はぁ…、ありがとうございます。」

「呼吸の精度を上げるのは単純だ。基礎体力向上!体を鍛え上げ、肺も強くする!では初めに素振り500回から!!初め!」


「!?」


一瞬目を見開くも、すぐに素振りを始めた。最初の数十回は良かったが段々と肩に力が入ってきていた。
後ろから両肩に手を置いて力を抜くよう促す。
少し良くなった。


「113、114。呼吸が浅いぞ。もっと深く吸い込め。」

100をこえたあたりから息が切れ始めていた。持久力が足りない。このあとの走り込みは多く取り入れた方が良さそうだ。

「244、245、246。力任せに振るな!腕も落ちてるぞ!あと半分だ、頑張れ!」

呼吸を整えながら刀を振るのは簡単なことではない。
月城は額から汗を流しながらも、俺が注意すればすぐに直して振り続けた。

「499、500!」


500回目終わるや否や月城は木刀を握ったままその場に座りこんだ。
ずっと握っていたせいで離せないのだ。

「ハァ…ハァ…。これは、もう腕の感覚がありません…」

「まだまだ!これからだ!次は打ち込み1000回!」

「!?」

今度は俺も木刀を構える。

「さぁこい!」

月城は重そうに腰を持ち上げ、まるで手に貼り付いたような木刀を構えた。

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