第6章 約束
「月城さんなら次はもっとできますよ。コツを掴むのが早いですから。」
「そうだといいのですが…」
「俺なんて兄上にたくさん稽古をつけてもらっていますが、全然上達しなくて。」
「うーん。千寿郎さんのお気持ちも分かりますが、私は千寿郎さんが刀を持たずに済むなら、それが一番だと思います。鬼など居なくなった世で生きてほしいです。」
それは今の鬼殺隊である我々にかかっているのですけれどね。本当に実現できるのかは全く想像できないが、もはやできるかできないかではない。ただひたすらに狩り続けるのみ。
「千寿郎さんは、剣士になる以外の道があるなら何になりたいですか?」
「え?なんでしょう…考えたことがなかったです。でも強いて言うなら何らかの形で人の役に立ちたいです。」
「それなら千寿郎さんの舞台はきっと山程ありますよ、選ぶのが大変なくらい。」
「そんな、俺は兄上と違って秀でたものがないですから…。」
「そんなことありませんよ。なんでも器用にやっていらっしゃいますから。まだご自身も知らない特技が眠っているやもしれません。」
「もし、そんなものがあるとしたら、どうやって気がつけばいいでしょう?」
「いろいろな物事に挑戦すること、じゃないでしょうか?」
「いろいろな物事…。」
千寿郎さんは遠くを見ながら考えておられた。
すると、後ろから杏寿郎さんが駆けてきて追いついた。
「二人共!何の話だ?」
「千寿郎さんの将来の話です。」
「将来か!」
杏寿郎さんも腕を組んで遠くを見た。
「千寿郎は学業の成績も良いからな!例えば教師なんかも良いんじゃないか?」
「先生ですか、それは合いそうですね千寿郎さん。どうです?」
「またまだ教わる身なので想像つかないですよ。」
千寿郎さんの声色は明るいものの、どこか寂しげでも合った。私と杏寿郎さんは自然と顔を見合わせた。
私にも分かりました。千寿郎さんは剣士になることを望んでいる、でもそこに辿り着けずにいる。杏寿郎さんとしても、剣士になるだけが道ではないと、遠回しに伝えてはいるが千寿郎さんにすれば才能がないと聞こえているのかもしれない。
千寿郎さん…どれだけ悩んでいることでしょう。
「時に月城!どうだった初めての座禅は!」
杏寿郎さんは話題を変えられた。