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桜月夜【鬼滅の刃】

第1章 異人の隊士


朝餉の支度が整い、父を呼びに行った。
母が死んでからすっかり気力を失くされてしまった父だが、いつものように振る舞えばいつかは…。
そう思い何年も経った。

声はかけたが、今日も食事は共にされないらしい。
仕方ない。いつものことだ。気にするな。
居間に戻ると千寿郎は既に膳を用意していた。
俺の反応を伺って見ているが、首を横に振って返した。
寂しいだろうな、千寿郎。

「それを持って行ったら、一緒に食べよう!腹が減ったな!」

「はい。すぐに戻ります!」

千寿郎は気丈に振る舞い、膳を父の部屋へ運んでいった。
なんとなく味噌汁から上がる湯気を眺めた。薄っすらと揺らめくそれに、幼い頃の食卓を思い出す。まだ母のいた食卓を。




―――――――――――――




「うまい!うまい!母上!今日も味噌汁がうまいです!」

「それはよかったです。ですが杏寿郎、口の中に食べ物が入ったままそのように大きく開けてはいけませんよ。」

「はい!!申し訳ありません!!」

「おい、杏寿郎!何か口から飛んできたぞ。」

「申し訳ありません父上!」


―――――――――――――


あの頃はまだ千寿郎はいなかった。
あの日常を教えてやれたらいいのに。




「兄上?」

千寿郎が戻ってきた。俺はずっと立ったままだったらしい。

「さて、いただくとしよう!!」


二人で食卓を囲むのが当たり前となった。昔に比べれば物寂しいかもしれないが、それでも今があるのは幸せなことだ。
















食事を終えて、片付けを千寿郎に任せて俺は道着に着替えた。家の道場の戸を全て開けて換気をし、道具を確認する。
木刀は彼女持っているのだろうか。以前、甘露寺に貸したものを使おう。

と、要の鳴く声が聞こえた。

着いたか!

縁側にあった草履を履いて庭から門扉へ向かった。


「御免ください!」

女性の声がする。昨日の異人隊士で間違いないだろう。
門扉を開くとあの稲穂色の頭がまず目に入り、次に青空のような瞳だ。
少し不安そうだった。


「よくきた!五十嵐隊員!」

「!?」


彼女はその大きな瞳をもっと大きくしていた。
妙な沈黙があった。


「あの、月城と申します。」

そうか!

「すまん!さあ入りなさい!」




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