第1章 異人の隊士
翌朝、俺は陽が上りきらぬうちに起きた。
そうだ新人の隊士が俺の稽古を受けに来る。
寝間着から着替え、部屋を出ると冷たい風が通り過ぎていった。寒さで背筋がピンと張る。
静かな庭を眺めていると、近くの木で休んでいた鎹鴉の要がゆっくりと飛んできた。止まりやすいよう腕を出すと静かに足をかけてきた。
「おはよう、要。今日は新人の隊士が稽古を受けに来る。髪が稲穂のような金色をした異人の隊士だ。道中迷わないよう、迎えにいってはくれないか。」
要は一つ鳴くと飛び去っていった。
これで彼女が迷うことはないだろう。
水を飲みに炊事場へ入ると弟の千寿郎が朝餉の支度を始めていた。
「あ、兄上。おはようございます。お戻りだったのですね。」
「おはよう!千寿郎も朝が早いな!」
千寿郎は眠そうな目をこすりながにこりとした。
それから湯呑に水を一杯入れてくれた。
それを一気に飲み干した。
「兄上はこれから鍛錬ですか?」
「うむ!だが俺ではなく新人隊士の鍛錬だ。稽古をつけてやることにしたのでな、今日から来ることになっている。」
「え!今日からですか?すみません…何も準備をしていませんでした。」
「構わん!昨夜急に決まったことだ!朝には来るように伝えているから、来たら紹介しよう!」
「はい!では、朝餉の準備をすぐにします。」
「よし!俺も手伝おう!!」
着物の袖を捲り、千寿郎から襷を借りた。
前日から水につけておいた米を炊き、葱と豆腐を切って味噌汁にした。魚も焼いた。腹の虫が鳴りそうな良い香りだ。
「兄上とこうして支度するのも、久しぶりですね。」
千寿郎が魚の火を見ながらぽつりと言った。
この時間は帰った直後でまだ眠っていたり、任務で戻っていない場合が多いからな。
「任せっきりですまない。千寿郎の方が段取りがよくなっているな。」
「俺にできることはこのくらいですから…」
千寿郎も、剣士を志している。
稽古も一人であってもよく励んでいる。だが正直伸び悩んでいた。俺がもっとみてやればよいのだが…。
「今日から来る新人の隊士は呼吸の精度が悪くてな。どうやって最終選別をくぐりぬけたのか不思議なくらいだ。千寿郎も時々見てやってくれ。そして一緒に鍛錬しよう!」
「はいっ!!」
千寿郎はそれを聞いて嬉しそうに微笑んでいた。
やはり寂しい思いをさせていたな。