第1章 異人の隊士
「柱とは…」
言いかけたところで他の隊士の少年が声をかけてきた。
「炎柱!報告いたします。」
「うむ!」
此度の被害と、調査の結果についての報告だった。
鬼は殲滅。死者数名あるものの全体の被害としては少ない方だった。
「承知した!報告ご苦労。さあ帰ろう!」
「はい!お疲れ様です!」
このなかなかに元気のある隊士と話しているうちに、先程の少女は山を降りてしまったようだ。
異人の隊士を見るのは初めてだ。呼吸が習得できていないようだが大丈夫だろうか。
と、もうすぐ麓というところであの稲穂色の髪が見えた。
他の隊士と比べて上背があるので尚目立つ。
木に寄りかかるようにして立ち止まっているが、傷が痛むのだろうか。
「どうした!有田!止血していないのか?」
彼女はなんとも言えない表情で俺を見た。
脇腹を抑えている。深い傷には見えないが、どういう気持ちの顔なのだろうかよく分からん。
「あっ、私のことですか?」
ん?
「他に人はいないだろう?それより傷が痛むのか?」
血は止まっている。毒でも受けたのだろうか。いや、他の傷ついた隊士に毒を受けた者はいなかった。
「大丈夫です。ただ、人生でこれほど痛みを感じたことがないので、ちょっと…。」
「そうか!大きな怪我がこれまで無かったのは運がいい!君は全集中の呼吸がうまく使えていないようだからな、鍛錬しないと今度はもっと大きな怪我を負うかもしれないな!」
「……。」
彼女の表情はさらに複雑なものへと変わった。
もちろん俺はこれで見捨てるような真似はしない。
「俺が稽古をつけてやる!もう安心だ!」
「え?」
「明日の朝より我が生家へ来い!」
「ちょっと待ってください。」
「どうした?何か問題があるのか?」
「いえ…」
「なら決まりだな!ではまた明日!さらばだ!」
彼女は鍛えればきっと実力のある剣士になるだろう。
切先の軌道は正確そのもの、上背もあり柔軟性もある。あとは呼吸と基礎体力だ。
うむ!明日が楽しみだ!
早く帰って寝るとしよう!