第4章 元町観光
「私の家ではこういった大きめのガラス瓶に水が入っているのが当たり前でしたので、これが普通だと思っていました。」
「洒落ているな!俺の家はやかんだったぞ。」
そうか、そういえば育手の方のお家もやかんだった。生活様式の違いだ。こういった些細なところも、他の人からは異様に映るのだろうか。やめたほうがいいのだろうか。
「始めるぞ!食べてすぐだから柔軟からしよう!」
炎柱様は竹筒を紙袋の側へ置いて、腕を伸ばしたり肩を回したりした。
楽観的で気持ちの良い人だけど、炎柱様も思っているのでしょうか。
「どうした月城!こっちにおいで!」
あまり視線の合わない目が私を誘う。顔は笑っていらっしゃるけど、どうなのだろう。
「はい。」
考えるのはやめよう。どう思われていようと稽古はつけていただけている。この人に従っていればきっと立派な隊士になれるはず…。
私はそう考えながら炎柱様と背中を合わせて、腕を絡ませる。
「いくぞ!」
ゆっくり背中で持ち上げられると背中とお腹が引き伸ばされた。あ、足がつかない…!
「うう…!」
食べたものがみな戻ってきそう。腹に力を入れてそれに耐えた。ゆっくりと足がつく位置に戻ると、今度は私が炎柱様を背で持ち上げる番。さすがに重いので足にも集中しなければ倒れそうだ。
その後も体をほぐす運動を中心に行ったが、力技も同然だった。それから受け身の練習のため何度も投げ飛ばされ、体術訓練で気絶寸前になり、剣術訓練で何度も峰打ちされた。体中が痛い。
「よし、今日はここまで!」
「はい、ありがとうございました。」
ひどい目にはあったが、立ってはいられる。前回より確実に身についているのだろう。炎柱様には深くお辞儀した。
「よく頑張ったな!次回の稽古までは、今日やったことを日々続けるといい!そうすれば体力も瞬発力もついてくる。」
「はい炎柱様。承知しました。」
「それと…んー…」
言いかけて止めてしまった。
炎柱様は話すべきかどうかで悩まれているご様子。
「はい?」
「その…別にどちらでも構わないのだが、俺と月城は師弟関係だ。だから炎柱様などと余所余所しく呼ばなくても良いぞ。」
決して遠慮をしていた訳ではない。ただ初めてお会いした時に、他の隊士が炎柱と呼んでいたからそうしたまでだ。