第4章 元町観光
「あんな…とは?」
「気迫が凄いというか、迫力があったな!ワハハ!」
「そうやって笑ってらっしゃいますけど、危うく不当請求に応えるところでしたよ?」
「よもやよもやだ!」
どこまでも楽観的で、いいのですけど心配ですよもう。
「気をつけてくださいね。日本人は狙われやすいのですから。さあ、まだまだ食べるものはありますよ。」
私はようやく紙袋を一つ渡した。ああやっと食べられる。一つの大きさが顔ぐらいある大きな豚饅頭。白くてふっくらした生地の中に味の染みた豚肉がギッシリ入っている。
一口食べてもまだ身は見えなかった。
炎柱様は大きくひと口。もぐもぐと噛んで飲み込むまでが早い。
「うまい!」
口に入るだけかぶりついてどんどん食べ進んでいく。
話すのも食べるのもせっかちな人。私が二口目を飲み込んだ時には既に一つ食べきっていた。
負けじと私も一度に三回かぶりついたが口の中で噛めないほど詰め込んでしまい、返って苦しかった。ああ、お茶が飲みたい。
しかしその後も炎柱様は目につく食べ物を買っては食べ、買っては食べ、良かれと思ってのことでしょうが私にも同じだけ食べさせようと勧めてきた。
「どうだうまいか?月城!」
「ふぁい(はい)、おいひいでふがもうむいでふ(美味しいですがもう無理です)。」
お腹が苦しくて午後の鍛錬に響きそうなのですが。もう座って休みたい。でもそんなことは言えない…。口の中のものをやっと飲み込んでから私は提案する。
「そろそろ稽古の続きをお願いできないでしょうか。」
食べるのと稽古するのとで言うと、楽なのは食べることなのだが、胃袋は鍛えていないので限界だった。
「やる気があるな!いいだろう!そろそろ戻ろう!」
良かった。もう食べ物の匂いも嗅ぎたくなかった。
炎柱様は残った食べ物を紙袋にまとめて口を綺麗に折った。
そして屋台の通りを抜け、再び空き地へ戻る。私はあまりに喉が乾いたので家に戻らせていただき、ガラス瓶に水をいれ、更に竹筒を二本、水を入れて持ってきた。一つは炎柱様へ。すぐ飲み干してしまっていたので、ガラス瓶から注ぎ足す。
「喉が渇きますよね。どうぞ、まだありますから。」
「ありがとう!それにしても月城の持っているものは風変わりなものが多いな!」
「そうですか?」
炎柱様は水の入ったガラス瓶を指差していた。
