第4章 元町観光
「ではそうしましょうか。」
「うむ!!では俺は向こうの店で買うので、月城はあの店の、なんだ饅頭のようなものを買ってきてくれ。」
そうと決まれば炎柱様の判断の早いこと。私にお金を渡すとさっと行ってしまった。このあたりは全て外国人がやっている屋台しかない。言葉は通じるでしょうか。炎柱様なら通じなくともなんとかやりそうだけれども。
私は言われた通りに、お店に並んで豚饅頭を買った。いくつ食べるか分からないが、沢山食べる方なのでとりあえず十個。大きな紙の袋に5個ずつ入れてもらって、もう両手は塞がった。とても食べ歩きはできない。
一度合流して、どんどん食べていただかなくては。
目立つ焔色の髪を探して歩いていると、大きな声が聞こえてきた。
「うまい!」
人だかりができていて本人は見えない。
ちょっと失礼と、人の垣根を分け入ると、まぁなんと。炎柱様は水餃子をわんこ蕎麦のように食べていらした。店主が笑いながらどんどん注ぎ足している。
「ぉお!月城!君も食べるか!これはいけるぞ!」
「良かったですねぇ。こちらも買ってきましたよ?」
「うむ!だが両手が塞がってこれでは食べ歩きは無理だな!」
「そうでしょう、そう思っておりましたよ。」
だから座って食べましょうと提案したのですよ。貴方ほど食べる方では無理ですよ。
近くに客席の用意はあるものの昼時なので埋まっている。これは食べ終わるのを待つしかなさそうですね。
私は暫く炎柱様の食べるお姿を眺めていた。一体どれほどで満足なさるのだろうと思ったが、先に鍋の中が空になった。
「うーん!御馳走様!」
店主はとても喜んでいた。笑いが止まらないのでしょうね。
一体何杯たいらげたのやら。
「ご主人、お勘定を!」
炎柱様が懐よりお財布を出すと…
「29杯食べたから、2円と90銭ネ!」
「…お待ちなさい。」
私は炎柱様のお金を出す手を止めて、店のご主人にずいと近寄った。
「ご主人、こちらは1杯2銭でしょう。」
私が近づいてもこのご主人ときたら、炎柱様の方ばかりみていられるので、少々睨みをきかせた。
「29杯食べましたなら58銭です。計算を間違えていますよ…?」
ご主人は渋々金額を言い直した。正規の値段を払っていただき、私たちはその場を後にした。
「よもや…月城もあんな顔をするのだな!」