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桜月夜【鬼滅の刃】

第4章 元町観光


女湯から出ると、入口近くの椅子に腰掛けて炎柱様は既にお待ちだった。首に手拭いをかけ、いつもは獅子の鬣のように立った前髪もまとめて後ろに流されていた。

「お待たせして申し訳ございません。」

声をかけると焔色の双眸がこちらを向いた。

「いい湯だったな!」

「ええ、とても。」

お肌も撫でるとつるんと指が滑っていく。体の凝りもとれた。おまけにお気に入りのオイルで髪もつやつやになった。
ああ、そうだ。

「炎柱様、御髪を失礼いたしますね。あちらを向いていただけますか?」

「ん?」

私は隣の椅子に座り、背を向けた炎柱様の濡れた髪を櫛で梳く。それから持っていたオイルを少量手にとって毛先からつけていった。ふわりと西洋ハーブの香りが漂う。そして美しい焔色に艶が増した。

「これはなんの香りだ?」

「椿オイルに西洋ハーブの香りをつけております。私の好みの調合ですので、苦手な香りでしたらごめんなさいね。」

「独特だが、いい香りだな!」

最後にもう一度櫛で梳く。

「はい、お終い。良いですよ。」

「うむ!ありがとう!」

「潮風で髪は傷みますからね。これで少し良くなりますよ。」

どおりでいつもよりごわごわしていた、と炎柱様は仰った。外にいる時間が長いと仕方ない。
私達は銭湯を出て、食事のために再び海側の屋台へ向かった。朝は食べませんでしたが、あれだけ楽しそうにされていたので行かないわけにもいかないでしょう。

「お食事は何にしましょうね?」

歩きながら隣を見ると、思ったよりお顔が近くにあったので心臓が飛び跳ねた。炎柱様もまさか私が顔を向けると思っていなかったようで、驚いてすぐ離れた。

「失敬!君から同じ香りがすると思い嗅いでしまった!!」

まぁ、そんなこと。私は堪えられず小さく笑ってしまった。
はっきりと言ってしまうあたり、なんと可愛らしい人。
そして羞恥心からか、すぐに食事の話に戻った。通りは土産屋も開いたので、朝よりも賑わいを見せている。

「屋台で好きなものを買って、どこかで座っていただきましょうか?」

「うむ!それもいいが、俺はぜひとも食べながら歩いてみたい!」

ほとんどの人が片手に食べ物を持って歩いている。これを真似されたいらしい。そのほうが縁日の気分が味わえると。
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