第4章 元町観光
「お、おはようございます!遅れて申し訳ございません!!」
「おはよう!俺も来たばかりだ、気にすることはない!さて、時間が限られているので、すぐ始めよう!」
深く頭を下げた私にかかったのはいつもの炎柱様の声だった。目が覚めるような溌剌としたお声で、怒ってはいないようで良かった。
頭を上げると爽やかな笑顔でいらっしゃる。とても素敵なのですが稽古は厳しいんですよね。
「刀をもて月城!まずは君の力を示せ!」
炎柱様は炎刀を抜き構えた。どこから向かって行こうとも弾き返されそうな隙の無さ。この迫力、尊敬致します。
私も刀を抜いて構えた。今の全力を放ち、私の力を示せ。
深く息を吸い、足の筋肉に集中させる。地面を蹴り一気に間合いを詰めて突き攻撃を繰り出す。
炎柱様は体を反らせてそれを躱した。そして刀で打ち返される。
「どうした?攻撃を続けろ!技の選択を誤るなよ。」
「はい!」
私はいつものようによく観察し、動きに合わせて足の位置を変え、絶えず刀を振るった。
刃同士がぶつかり火花も散る。
「腕の力だけで刀を振るな!全身を使え!」
「はい!」
本当は仰る意味がよく分からなかった。上半身の動きを加えても腰を痛めそうになる。
私はもう息を切らしながら打ち込んでいるのに、炎柱様のお顔は全く変わらない。全く疲れていらっしゃらない。
なんの手応えもないのでは、せっかく稽古に遠くまで来ていただいた甲斐がなくなってしまう。
何か一つでも成長しなくては…。
水の呼吸…
息を深く吸い込んで構えると、炎柱様の表情が少しだけ変わった気がした。
肆ノ型 打ち潮
波を打ち付けるような斬撃。
だが同時に炎柱様も構えて刀を振っていた。
弐ノ型 昇り炎天
二つの技はぶつかり、私の打ち潮は蒸発するようにあっさり消えてしまった。おまけに私の身体は衝撃波で吹き飛ばされた。距離はあったはずなのに。
受け身を取ろうとしたが、連日の疲労のせいか足を捻って膝をついてしまった。
「月城!大丈夫か?」
炎柱様はすぐに駆け寄ってくださった。
「大丈夫です。」
この程度と思ったが、立ち上がった瞬間、足首に電流のような痛みが走った。一瞬顔を歪めてしまった。でも、これしきで弱音は吐けない。
「挫いただろう。見せなさい。」
「いえ!大丈夫です!」
「いいから。」