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桜月夜【鬼滅の刃】

第19章 黎明のその先へ【END2】





「…これ以上は言うまい!!」



言いながら笑顔を作って見せた。
別れに心残りをしてほしくはない。月城は優しいから、俺が悲しんだら同情してしまうだろう。


すると、月城はようやく目を合わせてくれた。
あとどれほど、こうして視線を交わせるだろう。
俺は、溢れそうな気持ちを抑えて、膝の上で拳を握った。
だが彼女は、俺の拳を包むように手を乗せる。
触れられたことにまた心臓が跳ねる。

しなやかな手は、俺の拳を解いて握った。
この手を握り返したいが戸惑っていると。


「私…分からないんです…。」


震える声で言っていた。
また俯いてしまった彼女の顔を覗き込もうとすれば、すぐ逸らされる。


「分からない、とは?」


「……。」


「好きかどうか分からない、と?」

「いえ!好きです!」

「む…!?」

「あ…!ごめんなさい…」


なぜ謝る。
どういうことだ?俺に気持ちはあるが一緒にはいられないのか?何故だ?


「私が選ぶことは裏目に出るといいますか…。だから、どう判断したら良いのかわからないのです…」


父と二人で過ごしたくて、父を選んだ日に母と弟たちを亡くした。
継母と上手くやれず、家を出たら父に心労をかけて、病で亡くした。



「それに、杏寿郎さんも…。」


「俺は生きている。」


「傍にいると苦しくて、逃げていたら無限列車で……」


そうか…。
そう考えるか。


「君は優しいから、そう思ってしまうのかもしれないな。だが考えてみろ。事の発端は鬼だ。」


あの日、鬼と遭遇しなければ月城家は今も家族揃って幸せに過ごしていたかもしれない。
鬼殺隊など知らず、家業を継いでいたかもしれない。
月城なら、今頃結婚もしていただろう。
だがどれもこれも、鬼に壊された。そういう人たちは他にもたくさんいる。だから鬼殺隊は鬼を狩り続けている。



「月城。刃を自分に向けるな。厳しいことを言うが過ぎた時間は戻らない。ここでなくとも、選択しなければならないことはこれからもたくさんある。だが、二人なら助け合える。」

誰かを失うのが怖いのは君だけじゃない。
それは人間なら誰もが思うこと。



「私にできるでしょうか…。この前だって…助けることなんてできず、杏寿郎さんは大怪我を負って、失明まで。」


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