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桜月夜【鬼滅の刃】

第19章 黎明のその先へ【END2】




困ったな。月城は落ち込んだように俯いてしまった。

あれだけの戦いだ、命があっただけ運が良かったと言えよう。

「心配するな!まだもう片方見える!」

「……。」


自分のせいで俺が傷ついたとでも思っているのか?


「……むぅ…。そんな顔するな…。」


顔を覗きこんでも逸らされる。
仕方ないな。両手で彼女の両の頬を挟んでこちらを向かせる。


「こっちを見るんだ。」


月城は辛そうに目を合わせる。
君のせいじゃないだろうと言っても、その表情を変えることはできなかった。

これ以上かける言葉が分からない。
ならばと、ゆっくり抱き寄せて腕の中に閉じ込めてみる。

逃げるだろうか、嫌がるだろうか。
心配だったが、案外大人しかった。
これは…どちらに捉えていいのだろう。
迷い、ただ背を撫でる。
そのまま話を続けた。



「月城…。」

「………。」


「俺は君が好きだ。この気持ちは変わらない。これからも。」

ゆっくり身体を離し、肩を掴む。
真っ直ぐ目を合わせた。
どこまでも青い空のような目に俺が映る。


「君はどうだ?」



…恐れるな。彼女がどんな答えであっても、受け入れる。

月城の青空が震えたような気がした。
そして伏せたまつ毛に隠れてしまう。


「私、……私は……」


震える声。一言も聞き逃さぬようにそれに集中するが、彼女は沈黙してしまった…。
これは、やはりもう月城の心は俺から離れてしまったということだろうか…。


言いにくいことを、無理をして言わせるのは…。
俺は、彼女から手を離した。




「そうか…。すまない、俺は勘違いをしていたようだ。」




言いながらあの時、戦いに行く俺を引き止めた月城の顔を思い出す。
なんとも悲痛な、それでいて……。




「無限列車でのこと、君は俺に"行くな"と言って引き止めただろう。俺を心配してくれたのだろう…?あれが嬉しくてな!…だからてっきり君はまだ…。」


言いながら、だんだんと声が震えだしているのが分かった。
胃の奥が締め付けられる思いだ。



俺の気持ちを押し付けてはならない。
好きならば……、彼女を想うならば。





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