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桜月夜【鬼滅の刃】

第19章 黎明のその先へ【END2】



ゆっくり立ち上がると、俺の傍へくる。
廊下へ出て、いつも彼女に貸している部屋へ向かう。


「身体の具合はどうだ?」

どこか重たい空気をどうにかしようと声をかけた。

「はい…大丈夫です。」

「そうか!」

「……杏寿郎さんはその後、体調はいかがですか?」

「問題ない!」

「そうですか…。」

「………。」



部屋の襖を開けて、先に彼女を通す。
懐かしいのかゆっくりと部屋を見回し、鏡台を見てはあっと声を上げた。

鏡台には彼女に贈った羽の髪飾りを置いていた。
月城はすぐにその前に座り、髪飾りを手にする。


「これをどこで…?」

「君が鬼と遭遇したという道で拾ってくれた人がいてな。」

俺は月城の隣に腰を下ろす。


「君を探しに行って、見つけられたのはこれだけだった…」


「私、今日これを探しにあの坂道へ行ったんです。そうしたら偶然、炭治郎さんに会いまして。」


「そうか。」


月城はしばらく髪飾りを見つめて頬を緩めていた。
それから懐から小さな袋を取り出して、大切そうにそこにしまっていた。


「落としてしまい申し訳ございませんでした。」

「いや、また君の手に戻って良かった。」

「ありがとうございます。」

返事をする代わりに微笑むと、彼女も微笑み返した。
懐かしい…。胸の奥がじわりと温まってくる。

だが、月城はまた目を逸らし俯く。

「…離れている間のことは後でゆっくり聞かせてほしい。」

それよりも確かめたいことがある。

月城がゆっくり顔を上げた。呆気にとられたように目を丸くしている。
その青い双眸が俺を捉える。

俺は彼女の両手を握った。最初は驚いて手を引っ込めようとしていたが、ぎゅっと握ると抵抗はしなかった。


「月城…。」

「…はい…。」

「まずは…あの日、無限列車でのこと。助けに来てくれてありがとう。」

「………。」

月城は眉尻を下げてどこか不満気にも見えた。
彼女の白魚のような指が俺の顔に触れようとする。急に心臓が跳ねる思いだ。
だが指は戸惑い触れることはなかった。

「目を……。」

あぁ、これか。
とても潰れた目を見せるのは見苦しいと思い、眼帯で隠していた。


「治らなかったのですね…。」


「うむ…。」
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