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桜月夜【鬼滅の刃】

第19章 黎明のその先へ【END2】




「いいですか?」

「待って、何から話したらいいかしら…」

「離れていた間の話をしたらいいと思います。いきますよ…?」




トントントン…




扉を叩き、応える物音がないことに安心していると…




「煉獄さーん!ごめんくださーい!!」


「!!?」



炭治郎さんは大きな声で呼んでしまった。



「竈門少年か!!今行くぞ!!」


と倍ほど大きな声が返ってきた。


ますます緊張して頭がくらくらする。
私は少し離れて、恐る恐る様子を見ていた。
炭治郎さんはこっちにおいでと手招きしたけど、とても近くにいけない。
本当に心臓が飛び出しそう。



やがて門扉が少しだけ開いた。


「炭治郎さん、こんばんは。」


聞こえたのは千寿郎さんの声。
なんだか懐かしく感じた。

声を聞くとお顔が見たくなったけど、まだ少し怖い。


「千寿郎くん、こんばんは。」

「どうぞ上がってください。」

「ありがとうございます。今日はもう一人……」

と言いながら私の方を見る炭治郎さん。


いつまでもウジウジとしていられないわね。
胃がキュッとなるのを我慢して、私は門の前に歩み出た。

千寿郎さんと目が合う。
まるで時が一瞬止まったかのように、私達は動けなくなった。


「あ……あぁ……」



千寿郎さんの声にならない声。震える瞳。



「こんばんは、千寿郎さん。」



小さく微笑んでみせると、大きな瞳を震わせて駆け寄ってきた。
私は千寿郎さんの前で膝を折り、目線を合わせる。


「久しぶりですね…」


抱きしめてもいいかしら…。
泣いてしまいそうなお顔を見つめる。千寿郎さんは少しだけ肩を震わせていた。袴をぎゅっと握って、色んな気持ちを我慢していた。


「姉上……お帰りなさい……」



言いながら微笑み返してくれる千寿郎さんが愛おしくて、思わず抱きしめた。
本当はとても会いたかった…。
ここは私の知っている世界で間違いないんだと、やっと信じられた。


実の弟のように愛おしくて愛おしくて。
今こうして触れられることが嬉しくて、涙が溢れた。
抱きしめ合って、呼吸を合わせるとほっとする。


…と、足音がして門の奥、開いたままの玄関に目を向ける。



「あ…」



着流し姿で眼帯をつけた杏寿郎さんが静かに立っていた。
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