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桜月夜【鬼滅の刃】

第19章 黎明のその先へ【END2】




だけど余計なことだったら、嫌な思い出を掘り返してしまうだけだったら…

そう考えていると、炭治郎さんがまた手を強く握ってくれた。
大丈夫、と言っているかのよう。
一緒なら、大丈夫かな。


私は重い首を縦に振る。


炭治郎さんはまた微笑んでくれた。



「さぁ、そうと決まったら行きましょう!今からなら夕方には着けます!」

「そ、そうね。行きましょう。」


彼の笑顔は不思議と柔らかくて温かい。
まだ不安は残るけど、私までいつの間にか微笑むことができていた。


私達は道すがらずっと互いの事を話していた。
彼は山合の田舎の出身、私は港町出身。環境があまりにも違うので何を聞いても新鮮だった。

いつも持ち歩いているお菓子の缶を見せてあげると、その装飾に驚いていた。
中の飴を1つあげると喜んで味わって食べていた。


「禰豆子さんにも暗いところに来たらあげましょうね。」


背負われた箱に向かって言うと、中からふんふーんとご機嫌な声が聞こえた。


私はずっと歩いていると息切れを起こすので、何度か立ち止まって休憩をした。
胸が苦しくならないように炭治郎さんは気づいてくれて、歩調を合わせてくれた。





そして見慣れた道が見えてくると、今度は緊張で胸が苦しくなってきた。


「どうしよう炭治郎さん…!とっても緊張してきたわ…!!」

「そんな、大丈夫ですよ。」


村の入口が見えてきて、見慣れたお店の並ぶ道に入ると…。




「炭治郎さん…!もう…私!手に汗かいてきちゃった…」

と、隣を歩く彼を見れば、少し強張った顔をしていて。

「なんだか俺まで緊張してきました…」


炭治郎さんにまで緊張が移ってしまって…しっかりしなくちゃ…!







と思うものの、煉獄家のある通りに入ると…。




「炭治郎さん!やっぱり私怖いわ!」

「ここまで来たんですから頑張りましょう!」

「で、でも…緊張して心臓が弾けそう…!」

「弾けませんから!行きましょう…!」


情けないことに炭治郎さんに手を握ってもらって、やっとのことで家の前まできた。
もう陽は殆ど落ちていた。

炭治郎さんが門を叩こうとした時、ついその手を止めた。
心臓がずっと飛び跳ねていて苦しい。

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