第19章 黎明のその先へ【END2】
今絶対に赤くなってるわ…恥ずかしい…!!
私は熱くなった頬を手で覆って隠した。
「ど、どうしてそう思ったのですか?」
「俺、鼻がいいんです。においでわかります。」
におい?私に数字が見えるのと同じ…?
そんなことがあるのかしら…!
「そうなの…鼻がね…」
まだ動揺している。うまく次の言葉が出てこない。
それが分かってなのか、炭治郎さんは優しく微笑む。
「よかったら一緒に煉獄さんの家へ行きませんか?」
「え…」
怖かった。
もし、私が見てきた世界のようになっていたら…。
他の誰かが居たなら…それを素直に喜べない。傷つくのが怖い。
私は首を横に振る。
断ろうとしたら…
「煉獄さんも待ってると思います。」
待ってる…?
「それもにおいで分かるの?」
「はい。煉獄さんが月城さんの話をすると、少し悲しいにおいがします。顔は元気そうなのに、においだけ悲しんでいるというか…」
その悲しさが私に向けられたものかどうかは分からない。
期待してはいけない…私だって悲しい思いはしたくない…
だけど、いつもそうやって逃げると最後には後悔する。
怖くて動けない。
「煉獄さんが、言ってました…」
炭治郎さんは唐突に話し出す。
「これから幾度と、仲間の死を目にすることもあるだろう。だが立ち止まって悲しんでいても、時間は止まってはくれない。共に悲しんではくれない。苦しくとも、心を燃やせ。歯を食いしばって前を向け、って…」
目の前の少年と杏寿郎さんの姿が重なって見えた気がした。
炭治郎さんの心はとてもきれいな色で、小さな炎が灯っていた。
意思が受け継がれている。
「月城さんからは、とても辛く悲しいにおいがします。このままじゃ良くないです。」
分かっているんですよ、そんなこと。
でも踏み出せない…。自分が情けない……。
「だから、俺と一緒に行きましょう!」
炭治郎さんは「大丈夫!」と私の手を強く握って微笑んでくれた。
私よりずっと年も下なのに、とても強い子。
本当は杏寿郎さんにちゃんと謝りたい。
私の情緒で振り回したことを。
私如きが望めることではないけれど、もっと一緒にいたいと。
本当はちゃんと伝えたい…。