第19章 黎明のその先へ【END2】
「…うむ。」
思い返せば、俺を引き止めたときの力も凄いものだった。
女性であれだけの力を発揮できるのは、甘露寺の他見たことはない。
だがあれでは戦い続けることはできないだろう。
きっと月城自身が気づいていたはずだ。それでも何度も同じように息を……。
死ぬつもりだったのだろうか。
ある程度の覚悟を持って戦うのは皆同じ。
ここにいる彼らもしかり。
それでも失ったときの覚悟はどれだけ経験を積んでもどうにもならない。
この際、無事ならなんでもいいと思うことにしよう。
生きてさえいれば、どこかで会える日は来ると信じている。
それから一週間。蝶屋敷で治療を続け、家に帰る許可がようやくおりた。
家までは竈門少年が付き添ってくれて、なんとかたどり着けた。
門を開けた千寿郎は泣きながら抱きついてきた。
悲しませ、心配をかけたのは悪かったが、またこうして帰ってこられたことは幸運だ。
家の前ではなんだからと、竈門少年を客間に通して、俺は自室に戻り久しぶりに自分の着流しに袖を通す。
ふと、考えた。
いつの間にか彼女がきているんじゃないかと。
動かず耳を澄ませて、気配を探ろうとまでしてしまう。
居るわけはない。
「はぁ……」
溜息は静かな部屋に溶けていった。
客間に戻ると、千寿郎と竈門少年が話し込んでいた。
どうやら任務での俺のことを竈門少年が話していたようだ。
千寿郎が少し安心している。
この二人も上手くやってくれそうだな。
それから、竈門少年と、猪頭少年と、黄色い少年を継子として稽古をつけることを話した。猪頭少年と黄色い少年は今日は他の任務でいないが、三人共ここを拠点として稽古に励むことになった。
また継子が来てくれたことを千寿郎はとても喜んでいた。
この日は一旦、竈門少年だけ蝶屋敷へ戻った。
二人に説明して、後日改めて来るという。
「兄上…」
二人になったとき、千寿郎は俺の眼帯を心配そうに見た。
「これか?」
眼帯の下を見せてやると、一瞬肩を震わせた。
だからすぐに隠した。
「少し見えづらいが問題ない。そのうち慣れる。」
俯く千寿郎の頭をゆっくり撫でてやる。
下手をすると、こんな日は来なかったかもしれない。
あのとき、死を本気で覚悟した。
「千寿郎、少し話そう。」
縁側に座り、隣へ来るように視線で示した。
