第19章 黎明のその先へ【END2】
そして杏寿郎さんが踏み出した。
轟音と共に、赤く煌々と燃え盛る炎を纏ったように突き進んでいく。
対する鬼は青く荒れ狂う闘気を纏って突き進む。
私はその間に入るべく踏み出した。
立ち上がり、柄を握り、息をゆっくり吐き切る。
刀を強く握り、二つの数字がぶつかるところを狙う。
何故だかとてもゆっくりに見えた。
杏寿郎さんの刀が鬼の首元から腹部へ入る。
頸は逸れてしまったが、刃は深く入ったまま。
そして鬼の右手は腹部を狙ってくる。
私はその拳に何度も刀を突き刺した。それでも威力が弱まらないのでもう身体で受けるしかなかった。
杏寿郎さんの前に出て、刃を突き刺したままの拳を腹部に受ける。
「ぐ…っ……!」
重い。
歯を食いしばった。
二度は打ち込ませない!柄を握る手に力が入る。
すると硝子の刃がじわりと赤くなり、鬼の拳に刺さった状態で張り付いた。
再生が少し遅くなる。
互いの力が鎮まっていく。
どうなっただろう…。
「月城!」
杏寿郎さんの叫ぶ声が、なぜかとても遠くから聞こえた気がした。
それからすぐ、何も聞こえなくなって…見えなくなって…
最後に見えたのは暗闇を縁取るような光だった。
*******
頸を外した。
月城も倒れた。
だがこの鬼は逃がすわけにはいかない。
月城は日輪刀を握ったまま意識を失っている。
「くっそ…!!この女…!!」
猗窩座は片腕を地面につけて刀を引き抜こうと必死になっていた。
すかさず俺は頸に刃を当てた。思うように力がら入らない。猗窩座は動く左の拳を、俺の頭を目掛けて振るってきた。それを左手で受け止める。
「オオオオオオ!!!」
逃さない!
必ず頸を切る!!
視界の隅には微塵も動かない月城。
誰も死なせないと決めたはずなのに…!
陽光が差し始め、猗窩座の顔が焼け爛れてきた。
もう少し、あともう…!
柄が軋むほど握りしめ、刃は頸を半分まで斬ろうとしたとき、猗窩座は己の腕を千切り大きく飛んで後ろへ退いた。そして着地するのとほぼ同時に腕を再生させて、森の方へまた跳躍する。
逃げられる…!
追わなければいけないがもう体力がない。