第19章 黎明のその先へ【END2】
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はぁ……はぁ…………。
肺が破れそう。血の味がする。呼吸もしずらい。
身体が思うように動かない。
あと何回できるだろう。
何回ならもつ…?
いや、もうもつことなんか考えなくてもいい。
私にはもう残す家族もないのだから。
ここで散らす覚悟を今すぐ決めろ。
杏寿郎さんはあれほど傷つきながら戦っているのだから……。私も負けない…。絶対に死なせない…!
日輪刀を持つ手に力が入る。
柄がギシギシと音をたてている。
なんとか思い体を持ち上げ、一歩踏み出すとそれだけでも背中や肺が痛む。
いけ…走れ……!
自らを奮い立たせて、火花を散らす二人の元へ。
二人の攻撃になんてついていけない。
早すぎて追うのが精一杯だった。
だけど目が少しずつ慣れてきて、打ち込む隙の数字が見えるようになる。
ほんの少しでも考えると数字はすぐ消えてしまうから、見計らって刀を振るう。
鬼は杏寿郎さんに集中していて私には一切攻撃してこなかった。
これじゃあ止められない!
どうにか割り込まないと…。
「下がれ!!」
杏寿郎さんは怒ったように厳しい声で叫んだ。
その間も二人の打ち合いは止まない。
いつもなら驚いて動きが止まるけど、私も止まるわけにいかなかったから打ち込み続けた。
「おい女!目障りだ!」
鬼が苛立ちこちらに向かって拳を振るう。
すかさす距離をとったが、身体の横を通過する衝撃波で体勢を崩してしまった。
「月城!」
「放っておけ!俺に集中しろ杏寿郎!」
身体中が痛んでやっとのことで立ち上がれた。
その間も二人は戦っている。
杏寿郎さんはいつの間にか額を切っていて血を流している。
大変…このままじゃ、あの通りになってしまう!
あの鬼は私を本気では狙ってこない。
さっきだって多分わざと掠める程度にした。
もう一度呼吸をたくさん吐いて集中する。
全て吐ききれ…!
全ての力を出し切れ!
極限まで息を吐いて、酸欠になった身体が生きるためにとっておいた力を出す。
再び二人の間に入り、頸を狙って刀を突き出す。刃を肉に通す力がなければ削ぎ落とせ。もっと速く!
頸を全方向から削ぎ、杏寿郎さんを狙う腕も削り力を逃がす。