第19章 黎明のその先へ【END2】
「待…っ!」
また呼ぶより早く月城は猗窩座との間合いを詰めて、連続の突きを放った。
それは猗窩座の身体に深くは入らないものの、再生するより早く肉を削ぎ落としていく。
さらに呼吸を吐き出し、まるで氷の上で舞うような立ち回りで連続で斬りつけ、高く飛び上がったかと思うと頭上から落ちる勢いを刀に乗せて真っ二つにしようとした。
着地と同時に大きな衝撃が広がる。
猗窩座は紙一重で避けていた。
この間ほんの数秒。
だが今度は再生に時間がかかっている。
切り口がまるで凍ったように固まっていた。
しかし徐々に元に戻る。
月城は息を詰まらせて膝をついた。
無理な呼吸をしたせいだ。
恐らくは一時的に力を強めるが、後でその負担がかかる。
まずい、狙われてしまう。
だが猗窩座は俺に向かってきた。
あれだけ斬撃を受けようとも疲れ一つ見せない。
また激しく撃ち合いになった。
このままこちらに引き付けて…。
一閃を避けられ、打ち込まれる拳を刀身で受け流す。
身体を回転させて勢いを乗せて猗窩座の背中に叩き込む。
森の中へ吹き飛んでいく奴を追うと、不意をつくように突然姿を現し拳を振るう。
避けるものの、強烈な蹴りを浴びせられた。
「ぐぁ…………っ!」
刀身で受けるが衝撃で森の外へ飛ばされた。
だが途中で何かにぶつかって、それは俺を包み守るようにして土手に激突した。
振り向くと、月城が意識を朦朧とさせていた。頭を打ったか。
何故庇う?
だが、考える間はない。目の前の鬼の頸を切らなければならない。そうすることが彼女のためにもなる。
俺は立ち上がって体勢を整える。戦いに戻ろうとすると隊服の裾が引っ張られた。
月城がしがみついていた。
「待って………いかないで……」
息を切らし、身体中の痛みに耐えながら、それでもしがみつくのをやめなかった。
だから安心させるべく頭にそっと手を置いた。
月城は今にも泣きそうな顔をして見上げてくる。
「案ずるな。」
そっと手を離し、森から出てきた猗窩座の元へ戻る。
疲れを見せない奴と違って俺の身体は確実に疲弊していた。
それでも、やらなければならない。
守るものがあるから。