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桜月夜【鬼滅の刃】

第19章 黎明のその先へ【END2】



死があるからこそ、時間が有限だからこそ、一つ一つ慎重に選び取り、自らを作り上げていく。
誰にも等しく終わりがあるからこそ、他人を思いやり、愛することができる。


鬼にはそれが分からない。
可哀相だとも思う。


だが理解はできない。
これだけ違った価値基準で分かり合うことはできない。


「鬼にならないなら殺す。」


散々話したあげく、猗窩座は薄い笑みを浮かべて向かってきた。

不知火で迎え撃つ。
間髪入れずに繰り出される攻撃を紙一重で避けてこちらも刀を振るう。

強靭な筋肉で刃は簡単には通らない。
斬ってもすぐに再生する。

猗窩座は楽しげに喋りながら攻撃してきた。
上弦とは確かにそこらの鬼とは桁外れに強い。

さらに猗窩座は宙に飛び上がると虚空で拳を放つ。


血鬼術だ。見えないが必ずくる。
刀を構えて視界の隅々まで感覚を研ぎ澄ますと、重たい衝撃が刀にぶつかった。
手が痺れる。

何発も刀身で衝撃を受ける。

なるほど、離れた位置まで届くのか。それも一瞬にも満たない速度。このまま距離をとって戦われては厄介。

ならば…近づくまで!


即座に猗窩座の元へ間合いを詰めた。
至近距離で振り上げた刀も躱されてしまう。
さらには気味の悪いほどに高揚した表情。

「素晴らしい反応速度!」


言いながら攻撃は止まない。拳と刀がぶつかり合う。

猗窩座の右の拳が俺の頭を狙って打ち込まれようとしたとき、その拳に刃が突き刺さる。


「…!」

硝子の刃だ…!



「……月城……」



戸惑う暇もない。
突然現れた彼女に猗窩座も驚き目を見開いた。そしてすぐに後に退く。

月城の目は怒りで満ちている。


もう一度名前を呼ぼうとすると、言い切る前に彼女は猗窩座へ向かって行った。


駄目だ。彼女では…。
この鬼には敵わない。


「なんだこの女は!下がってろ!俺は杏寿郎と戦っているんだ!」

猗窩座は苛ついたように言いながら拳で斬撃を受ける。
どこか手加減している風にも見えた。
だが月城も負けじと刀を振り続けていた。
俺が見た中で一番鋭く速い斬撃だ。


「お前は許さない…!あの人は絶対に死なせない!」


月城は刀を構えて息を長く吐き出した。
あれでは彼女の身体に負担がかかる…!

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