第19章 黎明のその先へ【END2】
前方車両に到達したとき、ひっくり返っている竈門少年を見つけた。
手短に作戦を伝える。彼はすぐに聞く体制に入った。
しかしもう一人の猪頭少年が見当たらない。
彼にも指示を出さなければならない。
俺は後方車両に戻った。車両の上を走る足音が聞こえるので上に昇ると彼はいた。突然俺が現れたので大層驚いていたが、竈門少年と同じ指示を与え、前方車両へ向かわせた。
あとは守るのみ!
あの少年たちならすぐに頸を斬るだろうと確信があった。
俺は後方の車両を行ったり来たりして、鬼に細かい斬撃を何度も食らわせ、とにかく再生に時間がかかるよう努めた。
鬼側も再生に力を取られるので、思うようには戦えまい。
何度も、何度も往復し、前方車両に注意を払い、鬼の様子を探る。
これだけの血鬼術。十二鬼月であることは間違いないだろう。
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少しの後、断末魔の叫びが響いて、列車が大きく飛び上がった。
……脱線する!このままでは衝撃で死人がでるかもしれない。
咄嗟に技を連続で放ち、どうにか衝撃を緩和させようとしたが、それでも大きな鉄の塊はその胴体を地面に打ち付け、引きずり、火花を散らした。
ようやく静まったころには、どの車両も横転するか斜めになっていた。俺の近くの乗客も体を打ち付けて苦しんでいる。見たところ死人はいなさそうだが…。
すぐに乗客に避難指示を出した。歩ける者には怪我人の補助を頼んだ。
1両ずつくまなく確認する。黄色い少年は車両に挟まってはいるが問題はなさそうだ。
他の人は…?
足を折って動けずにいる人をおぶって車両から離れた位置まで運んだ。
もう一度車両に戻り、残っている人や逃げ遅れた人がいないか確認する。
大丈夫そうだな。
俺は竈門少年がいると思われる先頭の方へ急ぐ。
すぐに見つけた。倒れているが、怪我をしたのか…。
近づくと少年は全集中の常中で呼吸し続けていた。
腹部から出血しているな…。それを上から覗き込む。
「全集中の常中ができるようだな!感心感心!」
「煉獄さん…」
少年は驚いたように目を大きく開いた。
「常中は柱への第一歩だからな!柱までは一万歩あるかもしれないがな!」
「頑張ります……」
神妙な顔をする少年に、俺は呼吸の応用を一つ教えた。
集中し呼吸の精度をあげて止血をする方法だ。
