第19章 黎明のその先へ【END2】
もしや月城も帰ってくる途中でそれに巻き込まれたのでは……。
想像でいくら心配したところで、どうしようもない。
まずは数名の隊士を向かわせよう。
急ぎ調査に行ける隊士を集めて、先に現地へ行ってもらうことにした。
車庫、車両、始発の駅舎、行方不明になった人の家族や知人への聞き込み。
どうやら目的地へ到着するまでの間に行方不明になっている。運行前の車両も調べたが、不可解な点はこれといって見つからなかったと報告を受けた。
毎晩見回りも強化したが、それでも姿は現さない。
かなり慎重な鬼なのだろう。
ただそうしている間にも、行方不明者は増えていった。
これが鬼の仕業であることは間違いない。それもそこらの雑魚鬼とは違う。
やがて、無限列車は運行中止になってしまった。
人々の安全のためには仕方のないことだが、それはそれで困る。
さらに、同じ路線を走る列車で切り裂き魔まで出始めた。
まったく…鬼は次から次へと湧いてくるな。
それでも一つ一つ片付けるしかない。
人々が安心して列車を利用できるように…。
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俺が任務に加わって数日、切り裂き魔の件はすぐに解決した。車掌を殺害した後、奴はその近辺で犯行を続けていた。
無限列車の調査をする途中で始末できた。
鬼とは皆、極悪非道だ。
人々を苦しめ、傷つけ、それを楽しむ。
相手が女性であろうが子供であろうが関係ない。
切り裂き魔もたくさんの人を傷つけた。
しかしあの程度の鬼ならば月城でも問題なく倒せるだろう。
問題は無限列車だ。
長らく運行中止だったが、整備を終えて運行再開となった。
すでに行方不明者は四十人以上に上ると聞く。だとするとあの切り裂き魔は関係ないだろう。もっと力を蓄えた鬼が潜んでいる。
鬼の強さは単純に人を食った数だ。
となれば、上弦の可能性もある。
万が一上弦の鬼では一般隊士はまず歯が立たない。
「では明日、無限列車に…?」
朝日が照らし出す駅舎の外で、この件を調査をしていた少年の隊士が言う。
「無論!乗り込む!もう、今日だがな!」
それしかあるまい。どんな手を使ってくるかは分からんが、この事態であるから柱である俺が行くのだ。
今夜、乗車する。
この列車に潜む鬼を滅し、月城に会いに行く。