第19章 黎明のその先へ【END2】
しかし、こうまでして帰らないのは…やはり何か事情があるとしか思えない。
確かめに行くにも距離がな……。
お館様に相談してみるか。
彼女の家を後にしてから、支那そば屋に寄った。
女将さんとご主人も月城を最近見かけないと心配していた。
関西の地元にいるらしいとだけ伝えた。それしか分からないから。
運ばれてきた支那そばを一口啜る。
「ん、うまいな。相変わらず。」
女将さんは、奢るからたくさん食べなさいと言ってくれた。流石に申し訳ないので一杯だけに留めていると、食欲がないのではと余計に心配されてしまった。
いつもより食べられないのは気温の高低差のある季節だからと思っていたが、そうではないのかもしれない。
帰る頃、女将さんに強く背中を叩かれた。
きっと月城は帰ってくるからと。元気づけてもらった。
また二人でおいでと言ってくれた。俺もそうしたいが、そんな日は来るのだろうか。
帰りの列車の中もずっと彼女のことを考えていた。楽しかったころ、一緒に過ごした時間を鮮明に思い出そうとしていた。
だが思い出すほどに現在との差を感じてしまう。
あぁ君に会いたい。
記憶の中ばかりでなく、触れられる君に…。
遠ざかる潮風のにおい。
なんとなく、ここに来ることはもうないような気がした。
それから、お館様へは鴉経由で関西へ行きたいことを伝えた。
するとその方面へ向かう夜行列車で、不可解な行方不明事件が起きていると連絡がきた。
乗客が数名行方不明になっていて、それも決まって無限列車という列車で起きていると。
俺はその列車の調査も含めて、そのついでに関西へ行くことを許してもらった。
隠に頼んでもよいとも言われたが、個人的な事なので他人にばかり頼ってはいられない。
だが柱であるが故、あまり不在にもできない。他の柱に迷惑もかかるしな。だから任務のついでにと、お館様が気遣ってくださった。
無限列車…。見たことがある。
確か、月城が地元から帰ってくる時にそれに乗っていたはず。以前、駅まで迎えに行ったときに見た。
もしも鬼の仕業で、すでに数名食っているとしたら…。
早急に滅しなければならない。