第19章 黎明のその先へ【END2】
「私のことはわかる?」
と、小さな少女は自身を指差して聞いてきた。
「わかりますよ、あーちゃん。」
月城は答えて微笑むと、少女は喜んで抱きついた。
だが、月城は分からなかった。
なぜこの者たちの名が答えられるのか。
看病してもらった記憶はうっすらとあるが、意識は朦朧としていた。それがどうしてなのか。
これからどうしたいのか。何をすべきなのか。
ただひたすらに刀を振りたい衝動も理由が分からなかった。
まるで心はどこか別なところで考えているみたいだ。
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雷を連れた雲が雨が降らせた。
大雨だった。すべての音を消して何もかも洗い流す勢いの雨。
それを小さな建物で雨宿りさせてもらって、晴れたらまた海に行った。波の音は落ち着くから。
だけれどなぜか、桟橋を歩いていたら突然周りが暗くなって、何も見えなくなった。
足が竦んで動けなかった。どこまでも暗闇な気がして、知りたくなかったのかもしれない。
またここか…。
音も無くて、何も見えないところ。
ますます分からない。もう戻れない気さえした。
でも動かなければどうにもならないから…。床なのか分からない足元に膝をついて、見えない隙間や穴が空いていないか手でさっと触れて確認した。
つるつるした床のような感じがした。
何も見えないけど、歩いても平気かしら…?
私はとにかく歩いた。
どこまでも。
どこまでも。
自分さえ見えない暗闇の中を
どこまでも。
だけれど何も無かった。
見えないだけかもしれない。
本当はそこにあるものを見落としただけかもしれない。
そう思って歩き続けた。
それでも何も無い。
もう自分がそこにいるのかも疑ってしまう。
本当は意識だけなのではないか。
実は歩いていないのでは…。
あぁ…誰か。
誰か…
誰か…
助けて
私を見つけて…
姿も見えない私を誰が見つけられるだろう。
ふと、思い浮かんだのは和尚様だった。
最後に話した人。
でも、和尚様が居たのがどっちだったかは分からない。
そもそも向いている方向すら分からない。