第19章 黎明のその先へ【END2】
とは思ったものの、俺はこと月城に関してはせっかちだ。(それ以外もせっかちだと宇髄には言われるが。)
関西まで行くには、汽車だろうと時間はかかる。
あの鎹梟なんて健気にも飛んで行こうとしたが迷子になってしまい、鴉達に助けられて泣く泣く帰ってきた始末。
やはり手紙にしよう。
彼女の元町の家ならば住所が分かる。
家賃も払わず、荷物も放置したままにはしないだろうしな、そのうち帰ってくる。
そうだ、必ずあそこに帰ってくる…
ー月城。
君が遠い所にいるのは分かっているが、いつか帰ってくると信じて手紙を送る。
随分会っていないが変わりはないのだろうか。
俺と千寿郎は変わらず元気でやっている。
君が姿を消してから、君の梟は別の隊士の鎹となったのだが、今もよく俺のところに来てくれている。
熱心に君を探しているぞ。戻ったら会ってやってくれ。
それから、千寿郎も、とても心配しているから顔を見せてやってほしい。
無論、俺もだ。もう一度会えることを心待ちにしている。ー
要も忙しいので、通常郵便で出した。
返事がくる期待は、正直言って無い。それでも送った。
最初は週に一度。二ヶ月が経つ頃には二週に一度。
いずれも返事はなかった。
息災か。
君は今何をして過ごしている?
先日の任務の前に寄った茶屋が美味かったから、今度連れていきたい。
俺たちは変わらない。いつでも来てくれ。
待っているから。
だいたいいつもそんな内容だった。
これでは飽きられてしまうな。
盆の季節が近づく頃、休暇をもらって母上の墓参りに行った。
帰ったのは久しぶりだ。千寿郎の背が少し伸びたように感じる。
「兄上…その…。」
「ん?」
墓地までの道すがら、千寿郎は切り出したが、最後まで言えずにいるようだった。
「月城のことか?」
「はい…」
その様子だと、千寿郎のところにも連絡はないのだな。
「手紙は何度も出しているんだが、返事はない。」
「そう、ですか……」
関西地域にて、それらしい姿を見かけたという話は千寿郎にもしてある。
確かめに行きたいと言っていたが、俺はそれを止めた。
遠いから一人で行くのは危ないという理由で止めたが、本当はそれだけではない。