第19章 黎明のその先へ【END2】
***********
桜は散り、緑の葉が青々と美しく色濃くなり始めた。
風は温かく心地よいことが、まるで慰められているかのような気にさせる。
その後も月城の行方は分からないままだ。
あれから、彼女と対峙した子供の姿の白髪の鬼と、黒髪の鬼は滅したと情報があった。なんでも、新人の隊士がやったとか。
そして何人かの囚われた人々は帰ってきたそうだ!血鬼術の影響で意識が混濁しているそうだが、命に別状はないらしい。
俺もそれを聞いたときは、すぐ彼等の匿い先へ向かったのだが、そこに月城は居なかった。なぜ彼女だけいないのかは分からないが、皆傷一つついていなかった。無事で何より。
現場の隠に、もう一人居なかったかを聞いたが、他にはいないと言っていた。ただ、報告によると白髪の鬼の血鬼術は、異空間へと対象物を移動させることができたとか。どうやらそこに食料となる人間を生きたまま保存して、必要な時に取り出していたようだ。
つまりは、その鬼が滅したことにより、その場に戻ってくる者、異空間へ取り残される者、まったく別の場所へ出される者、もしくは喰われたあと…。
月城なら食われると出された瞬間に斬りかかりそうだがな。
とにかくあらゆる可能性がある。
帰ってこられないあらゆる可能性が…。
それでもきっと、何処かで生きていると信じている。
鬼殺隊に疲れたのならそれでもいい。鬼と関わることなく何処かで静かに暮らしているなら、それはそれで。
月城の鎹梟は彼女以外の隊士にあてられることになった。
だが上手くいかないようで、よく俺のところにきては休んでいった。
のんびりした性格で、いつも日中は寝てばかりいると聞いていたが、それは月城に心を開いていたからで、今は四六時中彼女を探しながら飛び回っている。
そして、いつも分からなくなるのだが、この梟の名前は何というんだったかな?要に聞くと。
『ミネルゥアッ!』
しかし梟は首を横に振る。
「違うそうだぞ?」
『ホー』
『ホー!カァッ!』
「はははっ!それはないだろう!」
確か発音が難しかったな。ミネルアは近い気がする。
この梟は静かにホーと鳴いて何かを訴えていた。それを要がよく聞いて訳してくれている。