第19章 黎明のその先へ【END2】
あまりこんなことはしたくないけれど、私は真実知りたさに屋敷へ忍び込んだ。
開けるのにコツがいる裏戸の開け方は変わらなかった。
でもどうしよう、廊下へ出て大丈夫だろうか。
天井裏から行ったほうがいいのかしら…。
でもそんなことをしても見つかればお父上様に酷く怒られそうな気がする。
会ったら会ったでそれでもいい。
その心持ちで廊下に出た。
…線香の香りがする。
人は…多いかもしれない。見つかるのは時間の問題かもと思っていたところ、早速喪服姿の人とすれ違った。
会釈したが、何も言わずに通り過ぎていった
まるで見えていないような…。千寿郎さんもそうだった。誰とも目が合わない。
私は存在している?よね?さっき門を叩いたりできたし。
歩みを進め、襖が開いたままの大きな部屋に行き着いた。
千寿郎さんが泣いている声がする。
そっと覗くと、祭壇の前に柩が置いてあり蓋は開いていた。
遺影の前にお父上様がいらっしゃるので見えない。
そしてすすり泣くあの女の人……やはり知らない人だ。
「いつまでもめそめそするな!みっともない!」
お父上様の大きな声に私まで肩がビクンと震えた。
「鬼殺とはそういう生業だ。お前も煉獄家の嫁に来たなら覚悟はあったはずだろう!」
「…はい……。申し訳ありません……。」
弱々しくすすり泣く女の人…。
お嫁さんなんだ……。
そして、お父上様が振り向かれたので遺影が見えた。
間違いなく
杏寿郎さんだった。
亡くなってしまったんだ…。
お父上様が言うように、鬼殺隊ならばそれは覚悟の上だ。私も杏寿郎さんも、敢えて口にはしなくとも覚悟はどこかでしている。
…していた。
視界が少しずつ水彩のように滲んでいく。
目が熱いと思ったら、涙がぽたりと落ちた。
覚悟なんてあるようで無かった。
考えたくも無かった。
私自身はともかく、あの人の死までは。