• テキストサイズ

桜月夜【鬼滅の刃】

第19章 黎明のその先へ【END2】




*****





どのくらい時間が経過しているのか全く分からない。


私は意識だけが漂う世界に一人きり。



意識があるとはいえ、何も見えず感じずにいると、ふわふわとしてきて考えることが困難になる。



どうなるんだろう。


生きているのか死んでいるのかも分からない。



















そんな何もない中、不意に頬を冷たい何かが通って行った。



もう感覚というものに随分鈍くなっていたが、だんだん目の前の景色に色がついてきた。



少しずつ、緑の草木と、土。



冷たいのは風だ。

風が吹いて、草が揺れて頬をくすぐった。



ぼんやりと瞬きすると、小さな虫が歩いていくのが見えた。

それからだんだんと身体が痛むことに気がついてきた。ずっと同じ姿勢で眠っていて、身体が凝ってしまったような痛み。
それに、倒れている。

起き上がろうとすると、更に身体が軋む。


そうだ、鬼は!?





急いで立ち上がったつもりでもふらふらとしていた。
それに朝だ。昼かな?太陽が出ているから鬼はいない。

刀は?


鞘を見ると収められている。


怪我は?


身体に触れて確認するも特別痛むところはない。




ゆっくり周りを見渡した。



ただの山道だった。


最後に居たのはここではない気がするけど。



でもなんだか見覚えがある。




なんとなく勘が呼ぶ方へふらふらと歩いた。



どこだっけ?この道は。



時々後ろを振り返りながら歩き続けると、道は開けて小さな町が見えた。



人も歩いているのが見える。



知っているけどよく思い出せないのはどうしてだろう。
血鬼術のせいなのか…。



それとも似ているだけかな。





町の中は知っているような風景なのにどこか違和感があった。

音が少し籠もって聞こえるし、まだ聴覚が戻っていないからそう感じるのかもしれない。


人の行き交う通りを過ぎて、勘で道を曲がった。



なんとなく…で歩き続ける。
立派なお屋敷の塀に沿った道だった。


きっと立派な人が住んでいるんだろうな…。


そう思いながら歩いていると門に忌中札があるのが見えて、同時に目に入った表札に息が止まった。



















煉獄…



















/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp