第19章 黎明のその先へ【END2】
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どのくらい時間が経過しているのか全く分からない。
私は意識だけが漂う世界に一人きり。
意識があるとはいえ、何も見えず感じずにいると、ふわふわとしてきて考えることが困難になる。
どうなるんだろう。
生きているのか死んでいるのかも分からない。
そんな何もない中、不意に頬を冷たい何かが通って行った。
もう感覚というものに随分鈍くなっていたが、だんだん目の前の景色に色がついてきた。
少しずつ、緑の草木と、土。
冷たいのは風だ。
風が吹いて、草が揺れて頬をくすぐった。
ぼんやりと瞬きすると、小さな虫が歩いていくのが見えた。
それからだんだんと身体が痛むことに気がついてきた。ずっと同じ姿勢で眠っていて、身体が凝ってしまったような痛み。
それに、倒れている。
起き上がろうとすると、更に身体が軋む。
そうだ、鬼は!?
急いで立ち上がったつもりでもふらふらとしていた。
それに朝だ。昼かな?太陽が出ているから鬼はいない。
刀は?
鞘を見ると収められている。
怪我は?
身体に触れて確認するも特別痛むところはない。
ゆっくり周りを見渡した。
ただの山道だった。
最後に居たのはここではない気がするけど。
でもなんだか見覚えがある。
なんとなく勘が呼ぶ方へふらふらと歩いた。
どこだっけ?この道は。
時々後ろを振り返りながら歩き続けると、道は開けて小さな町が見えた。
人も歩いているのが見える。
知っているけどよく思い出せないのはどうしてだろう。
血鬼術のせいなのか…。
それとも似ているだけかな。
町の中は知っているような風景なのにどこか違和感があった。
音が少し籠もって聞こえるし、まだ聴覚が戻っていないからそう感じるのかもしれない。
人の行き交う通りを過ぎて、勘で道を曲がった。
なんとなく…で歩き続ける。
立派なお屋敷の塀に沿った道だった。
きっと立派な人が住んでいるんだろうな…。
そう思いながら歩いていると門に忌中札があるのが見えて、同時に目に入った表札に息が止まった。
煉獄…