第19章 黎明のその先へ【END2】
「なんでしょうか…?」
「…素敵な髪飾りだ。それをどこで?」
「あぁ、これ?」
女性は嬉しそうに頬を染めていた。大切な人から貰ったのだろう。そう顔に書いてあった。
「頂いたんですよ。珍しいでしょう?」
話していると、それを贈ったものと思しき男性が近付いてきた。近くの店に入っていたようで、俺が彼女に声をかけているから大層怪しんでいた。
「どうした?」
「あぁ、大志さん。この方にね、髪飾りを褒められたのよ。」
彼女は嬉しそうに髪飾りにそっと触れている。
が。この男性は俺の顔と彼女の顔を交互に見た。緊張が見られる。なんとなく、これを購入したようには思えなかった。
「……君、少しいいだろうか。」
この大志という男性だけを呼び出して、女性から少し離れた所で話した。
まだ俺を怪しんでいるようだが、それはこちらも同じこと。
「あの髪飾りをどこで手に入れた?」
声色が変わらないよう努めて尋ねた。
男性は少々顔色を変えた。
「あ、あれは隣町の店で買った。……婚約祝に…」
焦っているのか、何か後ろめたいのか、目が泳いでいた。
「ほぅ、とても珍しいものと見たが、店は何という?」
いつの間にか睨むようにこの男を見ていた。
あれは隣町で売られているような代物ではない。
だが一点物かどうかも分からない。
「なんていったかな。店の名前までは…」
「そうか…。」
もっと突き詰めようか悩んでいると、先程の女性が歩み寄ってきた。
この男性を心配している。
「何かあったの…?」
女性は男性を見つめるが、彼は何でもないと答えていた。婚約者か…結婚前に不安にさせるようなことはしたくないな。
「実は、同じ髪飾りを俺も大切な人に贈った事がある。だが、最近彼女の行方が分からなくなってしまってな。この辺りまで来たことは分かっているんだが…」
「まぁ…そうだったのですか……。」
女性は同情して早く見つかるといいですねと言ってくれた。
もう一度男の方も見るが、彼は目を逸らした。
「その方、どのような容姿なのですか?見かけたら、貴方が探していると伝えておきます。」