第19章 黎明のその先へ【END2】
数刻して、要は帰ってきた。
手紙を持っている。
腕に停まらせて手紙を受け取るが
これは俺が渡したものだ。
「月城はどうした?」
要は頸を傾げた。
『見ツカラナイ。今梟ト他ノ鴉タチガサガシテイル。』
「見つからない?」
どういうことだ。
要は他の鴉たちと連絡を取り合って、すぐ情報を集めてくれた。
月城は確かにその日の夕方前に藤の花の家を出立し、次の任務のために二つ隣の町へ向かったと。その途中で鬼と遭遇し、突然消えてしまったという。
消えたということは、殺られたわけではない。
まだ生きているはず…!
彼女の梟を呼び寄せて、要に通訳を頼みながら鬼の様子を聞き出した。
鬼は子供のように幼く、二人組。
片方は白髪、もう片方は黒髪の鬼で双子のように容姿がに通っている。黒髪の鬼は感覚を無くす血鬼術を使い、もう片方の白髪の鬼は月城を一瞬にしてどこかへ吸い込んだという。
どんな血鬼術かはわからないが、月城程感覚の鋭い者がやられてしまったとなると、他の隊員には任せておけまい。
その晩の任務を終えてから、休まずにその足で彼女が向かった町へ行った。
開けた一本道、少し坂になっている。
鬼の気配が残っていないか慎重に辺を探った。
だが感じるものは何もない。
日が経っているせいか…あまり強くはないのか…。
町へ入って歩いてみた。何かそれらしい情報がないかと、いろいろな店で聞いて回ったが、神隠しや誘拐といった話は怪しむほど出てこなかった。
もともと向かう予定だったもう一つ先の町へ行けば分かるだろうか。
一通り探ってから町を出ようかと思った時。
少し先を歩く女性が、見覚えある羽根の髪飾りをつけていた。
あれは俺が月城に贈ったものと同じ…!
「お嬢さん!」
肩を軽く叩くときょとんとして振り向いた女性は、年は俺と同じくらいか少し若く見えた。
もちろん、月城ではない。
同じ髪飾りというだけで声をかけてしまったがどうしようか。