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桜月夜【鬼滅の刃】

第2章 一宿一飯


この見た目故に学校には通えなかった。
父の伝手の家庭教師が学校で教える事を代わりに教えてくれた。
授業のない日は、読書や絵画に励み、時に母が歌を教えてくれた。外で同じ年頃の子どもたちと遊んだ記憶はない。弟たちもそう。だから姉弟いつも一緒に遊んでいた。


「俺も、似たようなものです。物心つく前に母上は亡くなっていましたし、兄上は一日剣の稽古。それも、父上は母上が亡くなってからは教えることを止めてしまったので、兄上は一人でずっと…。俺も兄上の真似事でずっと木刀を振っていました。でも、本を読んでもらったり、一緒に庭で遊んだことはありますよ。」


楽しかった思い出が、お二人が手を取り合って歩んできた時間が今を繋いでいる。私もそうだ、過去の記憶にすがって今がある。どこか寂しそうにされる千寿郎さんの頭を、私は無意識に撫でてしまった。はっと驚かれていましたが、千寿郎さんはそのまま何も言わずにいてくれた。

「さぁ、そろそろ寝ましょうか。」

「そうですね。楽しかったです、月城さん。ありがとうございます。」


千寿郎さんは丁寧に三つ指ついてお辞儀したので、私も同じように頭を下げた。


「とんでもございません。お付き合いいただきありがとうございます。」


戸を静かに閉めて、私はお借りした部屋に戻った。外はまだ少し寒いはずなのに心が温かい。またお話したい、でも炎柱様に失礼かもしれないからあまり気取られないようにしなければ。















翌朝。太陽が昇りきらないうちにどうにか起きた私は、布団を畳み、髪を結い、襷をかけて、顔を洗い、炊事場へ。
昨晩に水に浸したお米を火にかける。次は…と。
味噌汁用のお出汁をとっていたところで千寿郎さんが起きてきた。

「月城さん、おはようございます。」

「おはようございます千寿郎さん。今朝は私が支度しますので、ゆっくりお休みになってください。」

「いえ、でも俺がやりますから大丈夫ですよ?」


申し訳なさそうに眉を下げて慌てている姿も可愛らしい。


「では一緒にしましょうか。」


そう提案すると喜んで受け入れて下さった。
一宿一飯の恩義に報いたいので、千寿郎さんにはお手伝い似回っていただいた。

「昆布で出汁をとるのですね…。」

「はい。これも母が女中から教わったやり方です。美味しいんですよ。」
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