第19章 黎明のその先へ【END2】
「珍しいのが歩いてるね。」
「っ!?」
背後から突然声がして振り向いた。
気が付かなかった。
血色の悪い子供…ではない。額から角が生えている。
鬼だ。
肩までの白髪に赤く尖った目をしていた。
そこそこ気配には敏感な方だと思っていたのに、この鬼はどうやって近づいてきたのだろう。
周りは障害物なんてない。開けた道だ。
警戒していると、その鬼の後ろからもう一人鬼が現れた。
同じ姿で、髪の色だけが違う。黒い髪色だ。
嘲笑う白髪の鬼とは違って、黒髪の鬼は深刻な顔をしている。
「異人だ…。異人の鬼狩りだ。」
「珍しいなぁ。」
白髪の鬼が前に出てきた。
すぐに刀を抜いて構える。
「まぁまぁ、そう慌てずに。」
黒髪の鬼が言いながら手をかざすように待ったをかけた。
するとどうしたのだろう、私の身体は。全く動けなくなった。
いや…動いてはいけない気がしている。
感覚が分からない。
力が全く入らない。
刀を構えたままただ鬼から目を離さずにいることしかできない。
「私の血鬼術、あらゆる感覚を操作できる。貴女は今、触覚を失った。動けないでしょう。少しでも動いたら倒れてしまうだろうよ。」
そうか。地に足がついた感覚がないから違和感があるんだ。
刀を持っていることもわからない程。
どうしたらいいの?感覚を無視して動いてどうにかなるのか…。
「あの人、異人も食べるのか?」
黒髪の鬼は白髪の鬼向かって言った。
あの人とは誰のことだろう?
「わからないけど、とりあえず保存してみようかな。どんな味がするだろうねぇ。」
白髪の鬼はニタニタと嫌な笑みで近づいてくる。
このまま頸を切れるだろうか。間合いに入った瞬間に刀を振ってみよう。
鬼が、刀の届く範囲に足を一歩踏み入れる瞬間、私は思い切って踏み出して、刀を振るように意識した。
声も出なかった。
感覚の無い中ただ必死で。