第19章 黎明のその先へ【END2】
次に目が覚めたのは梟の鳴き声がしたからだ。
夕方近くなっていた。
手紙を足にくくりつけられていて、読んでみると二つ隣の町へ行くようにとのこと。
私は藤の家の人々にお礼を言って、その町に向かった。
梟を肩に乗せて。
向かう間に、夜になった。
それでも今夜は明るい。
満月だった。
「きれいな月、ね?」
肩に乗るミネルヴァに話しかける。
彼女は月を見て目を丸くすると、空へ向かって羽ばたいていった。
静かな羽音。闇に溶けるように離れていくその姿を見送る。
梟って、見てると時々あの人を思い出す。
目のせいかしら、それともミネルヴァの頭の羽が飛び出しているからかな。
どうしているかな。
疲れていないかな…。
自分から離れておきながら、時々何事もなかったように思い出してしまう。
都合がよくて呆れちゃうわ。
一緒に居られることがあまりに幸せで、これでいいのか自信はないし、かといってどうすれば答えにたどり着くのかも分からない。
だから、ただただ目の前のことに対処していくのみ。
いつも思う。幼かったあの時に、別な選択をしていたなら結果はどう違ったのか。過ぎたことを考えても仕方がないのは分かっている。
なら未来は?
鬼のいない世界になったらどう変わるだろう?
これからそうなったなら。
きっと私は、父の仕事を継いで海を渡るだろう。
そして、杏寿郎さんに会うことも二度となくなる。
その時はきちんと別れを伝えて………。
伝えて………
嫌だな、会えなくなるのは。
誰か教えてほしい。
どうしたら良いのか。
だめだ、それでは。
そもそも決めるのは私自身。
なのに決めきれない、自分を赦してはいけない気がしている。
分からない。
考えているといつも疲れる。
答えが見つからないから。