第19章 黎明のその先へ【END2】
温かく心地がいい布団の中で目が覚めた。
見覚えのない部屋だったが、なんとなく藤の家だと思っていた。
頭はまだ覚めきっておらずぼんやりとしている。
もう一度目を瞑った。
あれ、確か…目が覚めるまで一緒にいると言っていたような…?
私は飛び起きて部屋をよく観察した。
あの人はどこに…?
ぐるりと部屋を見渡すと、机の上に置き手紙がある。
杏寿郎さんが書いたものだ。
すぐに分かる、この筆跡。
ー急遽指令が入り、すぐ向かわなければならなくなった。
目が覚めるまで居てやれずすまない。
疲れているだろうから、ゆっくり休みなさい。ー
手紙にはそれだけ書いてあった。
柱は忙しい。
それは分かりきったこと。
優しい人だから、きっと時間ぎりぎりまで居てくれたのでしょうね。
私には本当に勿体ない人…。
起きて家の者に挨拶して、湯浴みをさせてもらい、朝餉もいただいた。
藤の家の主人は、杏寿郎さんから預かったという封筒を一つくれた。
また手紙かと思ったが中身はお金だった。
美味しいものでも食べなさいとメモが入っている。
それにしては多いけど、こんなに寄越してどうしろと…。
朝方の出来事が後ろめたいのかしら。
珍しくがつがつとしていたけど、別に気にしなくてもいいのに…。
お金は今度返そう。
そう思って懐にしまっておいた。
さて、指令もまだないので有り難くもう一眠り、と。