第19章 黎明のその先へ【END2】
極めて普段通りの態度を努めた。
こうして彼女が隣にいて、大きな怪我もなくいてくれたなら、多少素っ気なかろうと構わない。
「また階級を上げたようだな!」
「いつの間にやら上がっていました。」
「日々頑張っている証拠だ!期待してるぞ。」
月城は少し困ったように微笑むと、何も言うことなく持ち場へ行ってしまった。
また少し取り残された気がしたが、今は任務中。私情を挟むな。
少しの気の緩みが命取りとなるのだから。
俺も町の様子を見つつ鬼の気配を探った。
他の隊士の情報によれば何人か食われている。同一の鬼かは分からぬが、この町に何度か出ているなら手がかりがあるはずだ。
だが数時間、情報収集と見回りを行ったがこの日成果はなかった。
これほど痕跡を消せるものだろうか。
ふと、視界に二人の隊士の姿が入る。
彼らに頼んだ地区は向こうだ。何かあったのか。
それにしては談笑しながら歩いている。それも俺に声はかけようとせずに町の外の方へ向かう足取りだ。
「待て。持ち場はどうした?」
「炎柱!お疲れ様です。次の任務地へ向かいます!」
…む?
「どういうことだ?鬼はまだ潜んでいるぞ。」
しかし彼らが冗談を言っているとも思えん。
隊士の二人は顔を見合わせている。
そして気まずそうに言った。
「ですが先程は、『鬼は狩った故に、次の任務地へ向かって構わない』と言っていたではありませんか。」
…そんなことを言った覚えはない。
「それは俺が本当に言ったのか?」
二人の隊士は気味悪がっていた。
「はい…。俺たち二人で聞いていました。」
もう一人が激しく頷いた。
これは…。
「もうひとりの女性隊士にも聞いてみてください。彼女にも自分から伝えにいくと、仰せでしたので…」
「何っ!」
そんなことを言った覚えはないし、彼らの言うことが嘘だとも思わない。
これは血鬼術だ。
俺は月城の元へ走り出した。
どこへ行った?
屋根に上って探すと、あの稲穂色は目立つのですぐにわかった。
だが彼女の目の前にいる人物を見て驚く。
俺とそっくり、否。
全く同じ顔、背格好、日輪刀から隊服、羽織に至るまで同じ奴がいた。