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桜月夜【鬼滅の刃】

第19章 黎明のその先へ【END2】


数日が経った。

残念ながら大晦日も正月も俺は家には帰れず、担当地区の警備強化にあたる。
すべての人々にとって大切な日だから、何も起きぬように目を光らせた。

おかげで千寿郎には寂しい思いをさせてしまったが。
俺がいないのを知ってか月城は顔を出しにきたようだ。

手紙での連絡は途絶え、千寿郎を通して様子を聞くも、年明けに1度来たきりで、それ以降は音沙汰なくなったようだ。

黙って家に帰り、会えたならとも思うが、彼女は居なかった。
手紙も送ってもみたが返事もない。

なぜ突然こんなにも拒絶されるのか。
ふと考えては、考えるなと自らに言って聞かせた。





ある日の任務。春はまだ遠く一層に凍える風の吹く黄昏時のこと。
数名の隊士と共に、町に現れたとされる鬼の討伐任務にあたった。
少人数だが階級の高い隊士が集められた。
あともう一人来るが、まだのようだな。
俺は腕につけた時計で時刻を確認した。予定時刻十分前か。
顔見知りの隊士もいたので、緊張を解すため会話をしていると。


「お待たせしており、申し訳ございません。」


向こうから、聞き慣れた声が耳を擽る。
稲穂のような金色の髪と、青空のような瞳をもった彼女がそこにいた。


「階級乙。月城リアネです。」


月城は俺の顔は見るものの、視線を合わせずに言った。

どれだけ心配したか。どれほど会いたかったか。
なぜ連絡をやめた。なぜそこまで避けるのか。

山程に湧いてくる感情を全て抑え込む。今は任務に集中だ。


「うむ!揃ったな!」


町の隅で地図を広げて、今夜の守備範囲と行動について伝えた。広い町なので一人で何区画も見る必要がある。故に経験のある隊士が集まった。


「各自持ち場の警護!少しでも異変を感じたら鴉にて連絡!今夜の平和も俺たちで守ろう!」

「「「はい!!」」」

皆威勢のよい返事をして、それぞれの持ち場へ向かった。
散り散りになる際に俺はこっそりと月城の方へ向かう。


「リアネ」


名前を呼ぶと、少し驚いたように振り向いた。
呼びなれなくて俺も少しこそばゆい。


「調子はどうだ?」

隣に並んで歩くと、心なしか彼女が早足になった気がした。


「まぁまぁですかね。」

「まぁまぁか!」

月城はそれしか言わなかった。

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