第18章 白日の中で待つ【END1】
時は現代。
鬼殺隊の励みにより鬼舞辻無惨は滅んだ。
犠牲は多数、傷痕は残るものの、平和な世は訪れた。
彼らの功績は子孫へ伝えられ、様々あった呼吸は舞となり捧げられている。
とある駅。
炎の舞を受け継ぐ煉獄家の嫡男、桃寿郎は部活の剣道の合同練習が終わり、その帰り道だった。
朝降った雨が嘘のように晴れ、傘がただ荷物で鬱陶しい。
自宅の最寄り駅へ向かう電車がゆっくりと停車した。
他の部員と共に電車に乗り込むと、座席はいくつか空いていて、皆で隣り合って座った。
話すことといえば、今日の練習試合のこと。
「あの先生、絶対審判おかしいよな!」
「贔屓しすぎなんだよ!」
今回の合同練習、相手の学校の顧問の審判は確かに酷いものだった。
自分のところの生徒に有利な判断。
「気持ちはわかる!だが、ここで陰口を言うのは良くない!誤審させないように、誰が見ても分かるように勝ちにいこう!」
桃寿郎は朗らかに言った。
周りの生徒の反応といえば、やれやれと呆れていた。
桃寿郎はいつも前向きで、小言や陰口など言ったことがない。
その明るさに元気づけられる一方で、鬱陶しがる者もいた。
しかし、そんな者に何を言われようとも笑って返せるほどメンタルの強靭な桃寿郎。
祖父曰く、曽祖父の兄がそうだったとか。
そんな桃寿郎。日々学業と剣道に明け暮れる日々だったが、この日からそれは変わることになる。
ほんの些細な出来事だった。
途中停車した駅でのこと。
角の席に座っていた女性が、手すりに傘を掛け忘れたまま降りてしまった。
すぐに気づいたので桃寿郎は傘を持って電車を降り、後を追った。
背の高い、ブロンドヘアの女性だった。
「あの…!」
肩を叩いて呼びかけると、彼女は振り向いた。
後ろ姿より幼い顔立ち。同じ年の頃か。
真っ青な、今の空のような目をしていた。
ビリビリと身体が痺れるような感覚が走る。
美しい人だと思った。
カラーコンタクトではない青空のような目の色。髪色といい、外国人かもしれない。それでも日本語で続けた。
「傘を忘れましたよ。」
差し出すと、その傘を両手で受け取り、彼女は柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます。」