第18章 白日の中で待つ【END1】
彼女がどれだけ心残りだったか、まるで同じ心を共有しているかのように分かった。
この空間がそうさせるのかもしれない。
「私も戻りたかった…。でも本当に一瞬だったの。」
泣き面のままでリアネを見つめた。両手で顔を包むと、柔らかい頬の感触が伝わってくる。
「痛かったか?」
「いいえ。あっという間でしたので、何も感じる余裕がなくて。」
リアネはそう言って困ったように微笑んでいた。
それを見るとつられて頬が緩む。
そのまま…ゆっくり口づけた。
温かい。柔らかい。
死んだのが嘘のようだ。
俺はどうしても君に伝えたかったことがある。
彼女の額に、己の額を合わせた。
「愛してる…。」
いざ口にするとやはり恥ずかしいな。
彼女の反応を見ると、頬が染まっていた。
照れている……!
可愛い!!
思わずぎゅっと抱き締めた。
「分かってましたよ。」
リアネはそう言って、また俺の背をさすった。
ちゃんと伝わっていたなら良かった…。
ところでもう一つ気になるのは…。
体を離して肩をしっかりと掴む。
リアネはきょとんとしていた。
「君をこんな目に合わせた鬼はどんな姿をしていた!?」
「え!」
「お館様が仰るには、上弦と遭遇したのではないかとのことだ。」
「本当に一瞬だったのでね…」
うーんと考えていると、何か思い出したように目が大きくなった。
その仕草さえも可愛らしい。
「上弦かどうかは分かりませんが、目がたくさんありました!」
その悍ましい姿に憎悪した次の瞬間には体が崩れたという。
下肢が離れたことには気が付かなかったとか。
「そうか。だが、後進はしっかり育っていたから、彼らが倒してくれるだろう!」
俺たちは互いを見ては微笑みあった。
そしてまた自然に抱き合って口づける。
心の底から癒された。
『コホン…』
母上が咳払いしたので慌てて立ち上がった。
そうだった、母上の前だということをすっかり忘れていた!