第18章 白日の中で待つ【END1】
車両は横転して止まった。
すぐに被害を確認する。
車両の中の乗客を外へ避難させ、外れた座席の下敷きになったものを救出した。
間もなく隠も駆けつけて救助に当たってくれるので、俺は竈門少年と猪頭少年の安否を確認しに向かった。
猪頭少年は元気そうだったので問題ない。
竈門少年は…倒れていた。
だが全集中の常中ができていた。これは関心だ。
止血のやり方を教えると、これまたすぐにできていた。
彼は見込みがある。
今後の成長が楽しみだ。すぐにでも鍛えてやりたいが、今はゆっくり休んでもらおう。
だが…
どうもこの日はそう簡単に事が収まらなかった。
凄まじい鬼気を感じ、咄嗟に技を放つ。
奴は直ぐに距離を取った。
二つに斬り裂いた腕は瞬時にくっついた。
赤い髪と鍛えられた体躯。
目には 上弦 参 の文字。
見たところ肉弾戦を得意とする鬼。
月城を殺った鬼ではないだろうか…。
この上弦の参、名を猗窩座と名乗った。
初対面だがどうにも俺に固執してくる。
鬼にならないかと誘いまでしてきた。
なるわけないだろう。
鬼を滅ぼすことこそ使命だ。
鬼になって技を高めたところで
俺の大切な人たちは一人も帰ってはこない。
そして、今ここに上弦が現れたということは、やはり事態は大きく変化している。
ここで倒せたなら…流れは鬼殺隊に有利。
猗窩座は1秒にも満たない速度で拳を振るう。
それを刀で防ぎながら斬りかかった。
奴は素手で防御し、いくら腕を切り落とそうともあっという間に元の形に戻った。
これまで出会ったどの鬼より強い。
闘うという行為をただ楽しんでいる。
それで一体何人殺してきたのだろう。
「…っ!」
奴の拳は鋭い。掠っただけで額が切れた。
血が大量に流れ落ちてきて目に入った。
速い。
回復の早さも凄まじい。
攻撃が防ぎきれない。
腹と左目に拳を喰らってしまった。
目は潰れた。腹の中は骨が砕けで内臓に刺さっている。
俺は…ここで終わるのか
心のどこかでそう感じた。
まだ夜は明けない。近くには怪我人が大勢いる。
彼らを守ることが優先だ。